研究領域 | 代謝アダプテーションのトランスオミクス解析 |
研究課題/領域番号 |
18H04808
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平井 優美 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (90415274)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノムスケールモデル / トランスクリプトーム / フラックスバランス解析 / シロイヌナズナ / 乾燥ストレス |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナのゲノムスケールの代謝モデルを用いたフラックスバランス解析(FBA)により、乾燥ストレス下での代謝フラックスの分布を明らかにすることを目指した。ゲノムスケールのglobal modelとしてAraGEM(de Oliveira Dal’Molin et al. 2010)を用いた。これは、シロイヌナズナの1,601種の代謝反応からなるモデルで、1,737種の代謝産物を含んでいる。乾燥ストレス条件のトランスクリプトームデータを用いてglobal modelをトリミングし、乾燥ストレス特異的なモデル(context-specific model)を構築することを着想した。Bechtold et al. (2016)で報告された乾燥条件のトランスクリプトームデータを用いて、Gene Inactivity Moderated by Metabolism and Expression(GIMME、Becker and Palsson, 2008)というアルゴリズムでトリミングを行ない、乾燥モデルを得た。同様に、通常条件(コントロール)のトランスクリプトームデータを用いてコントロールモデルを得た。FBAにおける目的関数をバイオマス生産速度(biomass production rate)として、これを最大化するよう計算を行ない、乾燥、コントロール両条件でのフラックス分布を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかのトリミングのアルゴリズムを検討し、もっとも妥当な結果を与えたGIMMEを採用した。GIMMEによるトリミングの際にトランスクリプトームデータの閾値をいろいろ変化させて、妥当な閾値を検討した。適切に閾値を設定することで、バイオマス生産速度の経時的変化パターンを、Bechtold et al. (2016)で報告されている生重量増加速度の経時的変化パターンと一致させることができた。この閾値を使って作成したcontext-specific modelが実際の代謝状態を反映したものになっているかを確認するため、乾燥モデル、コントロールモデルでそれぞれトリミングされずに残った代謝産物と、Bechtold et al. (2016)で報告されたメタボロームデータ中の代謝産物を比較した。報告された代謝産物の90%程度がモデルに含まれており、概ね正しく代謝状態を反映していることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
構築したcontext-specific modelを用いて、乾燥ストレス耐性に関わる代謝反応を同定することを目指す。また、現在はデータベース上のオミクスデータを利用してモデルの構築を行なっているが、将来的に自前で取得したオミクスデータを用いるために、乾燥ストレス条件での植物栽培法について検討する。2018年度に論文発表された、複雑な環境条件における植物の応答を定量解析するための表現型解析用栽培システムに注目し、同論文著者との共同研究で、モデリングに適したオミクスデータを取得できる乾燥ストレス栽培法を決定する計画である。
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