研究領域 | 進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~ |
研究課題/領域番号 |
18H04815
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
岡田 泰和 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (10638597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 表現型可塑性 / 性選択 / 武器 |
研究実績の概要 |
私は,武器をもつ昆虫をモデルとして,様々な体モジュールが,全体として機能的なパフォーマンスを持つよう統合的に発生する仕組みに興味を持っている. シカやカブトムシの角など,性選択形質の大きな特徴は,体の一部の巨大化である.これに加え,性的な武器や装飾は,その発生・発達の過程で,体の一部が鋭敏に栄養状態に応答するように作られていることも大きな特徴である.性的形質が”個体の質を正しく反映する”という上で栄養応答性の高さは重要であり,種を超えた共通の性選択形質の特徴となっている. 今年度は,オスが大アゴを武器として用いるオオツノコクヌストモドキ(Gnatocerus cornutus,以下オオツノ)という甲虫を用いて,栄養応答性の主要なメカニズムのひとつと目されているインスリン経路に注目した研究を主に進めた.昆虫ではインスリンや受容体をコードする遺伝子は多様化しており,種によって数は異なるが,ほとんどの昆虫は複数のリガンドや受容体を持つ.本講演ではオオツノが持つインスリン経路の主要な遺伝子について,コピー数や配列を整理し,それらの発現解析やRNAiによる機能解析により武器サイズを決める因子を特定し,特定のペプチドが武器サイズの栄養応答を特異的に担っていることが明らかになった.インスリン経路は動物では広く保存されている,という見方が一般的だが,経路を構成する個々の遺伝子は多様化が進んでおり,その多様化が性的形質の獲得や多様化を促進したことがわかってきた.また,オオツノの発生遺伝モデル化に向けて,ゲノムシーケンスを開始し,サーベイシーケンスを完了し,Chromiumシステムによるゲノム配列決定が進められている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
栄養応答性の主要なメカニズムのひとつと目されているインスリン経路に注目した研究で,遺伝子の発現と機能解析の両面からの解析が完了し,特定の遺伝子に帰着することができたため論文化を進めている.また,オオツノの発生遺伝モデル化に向けて,ゲノムシーケンスを開始し,サーベイシーケンスを完了し,Chromiumシステムによるゲノム配列決定が進められている.
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今後の研究の推進方策 |
武器と他の体モジュールのあいだに発生的リンクをもたらすメカニズム解明にむけて,生態発生学的解析(RNAiなどの実験的手法とトランスクリプトームによる,発生関連遺伝子の網羅的発現解析,形態計測学による変異性の評価)を行う.具体的には,栄養条件やオス・メス間,モジュール間で異なる形態発生をもたらす遺伝子を明らかにするため,飼育環境や性別の異なる個体の間で,発生過程で発現する遺伝子を網羅的に比較する解析(RNAseq)を行う.また,具体的に絞込みができてきた因子,とくに栄養依存的な発生・発達を制御するインスリン経路遺伝子については,部位や発生ステージを広く対象とした精緻な発生・生理学解析を RNAi,リアルタイム定量PCRなどを用いてすすめる.また,ゲノム配列解析を進め,リシーケンスなどによる系統間・種間比較を進めたい.
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