研究領域 | 進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~ |
研究課題/領域番号 |
18H04825
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安岡 有理 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (70724954)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 進化 / 発生 / ゲノミクス / 遺伝子発現制御 / ChIP-seq |
研究実績の概要 |
転写因子ー標的遺伝子関係の揺らぎを測定するため、まずはネッタイツメガエル胚を用いたChIP実験やRNA抽出、ゲノムDNA抽出の条件を検討した。その結果、ChIP実験には100-400個ほどの胚があれば充分であること、胚1個からRNA-seq解析に十分な量のRNAが抽出できること、精巣摘出後のオス個体からでもゲノムDNA抽出に十分な量の血液が得られることが明らかとなった。したがって、1ペアの雌雄から得た同胞胚を用いた実験でChIP-seq解析、RNA-seq解析、ゲノムリシーケンスすべてを行うことが比較的容易となり、しかもRNA-seq解析ではコントロール群と転写因子機能阻害群とで個体間の揺らぎも考慮に入れながら揺らぎを測定することが可能となった。 これらの条件のもと、ネッタイツメガエルGolden系統を用いて転写因子Otx2とその標的遺伝子との関係の揺らぎを測定する実験を行った。まずは原腸胚で実験を行い、ChIP-seqライブラリとRNA-seq解析用のtotal RNAサンプル、ゲノムリシーケンス用の親個体のゲノムDNAを合計5ペア分用意し、領域内の大規模解析支援班に送付して解析を依頼した。また、ChIP-seq解析の実験誤差とペア間での揺らぎの関係を明らかにするため、異母兄弟胚を用いたChIP-seq解析も行い、大規模解析支援班からシーケンスデータを得た。 神経胚・咽頭胚・オタマジャクシ幼生についてもGolden系統4-5ペア分を用いて同様の実験を行い、今後ChIP実験・RNA抽出・DNA抽出を行うサンプルを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年5月に所属研究機関を変更したため、実験環境整備に時間がかかったものの、その後実験条件の検討が順調に進み、安定してシーケンス解析用サンプルを得られるようになった。原腸胚とOtx2という最も確立されている実験系については、すでに5セット分のサンプルをシーケンス解析に回しており、今後解析を進めることで大きな発見が期待できる。他のステージでの実験条件の検討や、ネッタイツメガエルIvory Coast系統、他の転写因子の抗体などの準備も着々と進んでおり幅広い研究を展開する素地ができた。
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今後の研究の推進方策 |
Golden系統の原腸胚を用いたOtx2に関するデータの解析を進め、ChIP-seqデータのペア間の揺らぎ、RNA-seqデータの個体間およびペア間での揺らぎを測定し、ゲノムリシーケンスデータと合わせて相互の関係を明らかにする。さらに神経胚、咽頭胚、尾芽胚のデータを加えていき、ステージ間で各揺らぎにどのような変化があるのかを明らかにする。 Ivory Coast系統を用いて同様にOtx2に関する実験を行い、系統内の揺らぎと系統間の揺らぎの相関関係を調べる。系統間で揺らぎの大きい遺伝子・ゲノム領域については、アフリカツメガエルゲノムとの比較を行い、進化に影響を及ぼしているのかを検討する。 Otx2と同様に胚発生を通じて発現し続けるFoxa2や、原腸胚に発現が限定されるMix1やSiaといった転写因子についても同様の実験ができれば、転写因子の種類による揺らぎの大きさに違いについても議論できるようになる。
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