公募研究
ハマウツボ科寄生植物は、宿主植物からのシグナルを受けて、根の細胞をリプログラミングして寄生器官である吸器を新生する。吸器の先端には分裂活性の高いメリステム様の組織が観察され、吸器幹細胞があると考えられる。この細胞群は、宿主植物が近傍にある場合には分裂を持続することで吸器の伸長を促し、宿主に到達すると細長い特殊な形状をした侵入細胞へと運命を変える。本研究では、モデル寄生植物コシオガマから単離した、吸器幹細胞の分裂活性の維持と侵入細胞への運命転換に異常を生じた変異体の解析を通して、宿主シグナルに依存した吸器幹細胞の運命制御機構を解明する。本年度の成果として、1. 寄生植物コシオガマから吸器が伸長する変異体2ラインを単離し、その原因遺伝子を同定した。2. これらの変異体では野生型に比べて吸器先端部の細胞分裂活性が長く維持されていることを明らかにした。3. 変異体を宿主に感染させると、吸器の先端部が侵入細胞に変化せず、野生型より高い確率で宿主への侵入に失敗することが明らかになった。これらの結果から、吸器先端部の細胞の運命が寄生植物のエチレンシグナル伝達系により制御されていることが示唆された。今後は、吸器幹細胞のエチレンシグナルによる運命制御を明らかにするために、吸器形成時のエチレンまたはエチレン前駆体の蓄積量を測定、変異体におけるトランスクリプトーム解析、変異体のサプレッサー変異の単離を予定している。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、吸器のメリステム組織の細胞分裂活性やその運命転換についての知見を得ることができたため、おおむね順調に進展していると考えている。
変異体を用いたとランスクリプトーム解析により、下流のシグナル経路の同定を行う。また、サプレッサースクリーニングを継続する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Frontiers Plant Sci.
巻: 10 ページ: 328
doi: 10.3389/fpls.2019.00328
巻: 10 ページ: 1056
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Curr. Biol.
巻: 29 ページ: 3041-3052
doi: 10.1016/j.cub.2019.07.086.