研究領域 | 植物の生命力を支える多能性幹細胞の基盤原理 |
研究課題/領域番号 |
18H04842
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
相田 光宏 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, 教授 (90311787)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 植物 / 分裂組織 / シュート |
研究実績の概要 |
今年度は茎頂分裂組織形成の制御因子であるCUC1・CUC2・CUC3とオーキシンおよび幹細胞との関連を明らかにするため、以下の研究を進めた。 1)CUC遺伝子とオーキシンの生合成との関係を調べるため、胚発生における主要なオーキシン生合成遺伝子であるYUC1およびYUC4について発現解析を行ったところ、どちらの発現もcuc2 cuc3二重変異体において著しく減少することがわかった。これらの遺伝子はいずれもオーキシン生合成の律速酵素をコードすることから、CUC2とCUC3はYUC1・YUC4の発現の活性化を介して、胚頂端部におけるオーキシンの生合成を促進することが示唆された。 2)CUC遺伝子とオーキシン極性輸送との関係を調べるため、極性輸送の阻害剤であるNPAをcuc2 cuc3二重変異体に投与する実験を行った。オーキシン応答性リポーターであるDR5の発現を指標にNPAの影響を調べたところ、二重変異体は野生型よりもNPAに対して耐性を持つことがわかった。このことから、二重変異体ではオーキシンの極性輸送の活性が低いことが示唆された。 3)CUC1の過剰発現が幹細胞制御因子であるWUSの発現に与える影響を調べたところ、CUC1はWUSの発現を促進する能力を持つことがわかった。 以上から、CUC遺伝子はオーキシンの生合成、極性輸送、およびWUSの発現を促進することが示唆される。オーキシンはシュートにおいて幹細胞の活性を抑制することが知られていることから、CUC遺伝子は胚の茎頂部においてオーキシンの活性を抑制することで、茎頂の幹細胞活性を促進する可能性が浮かび上がった。今後はこの点を更に詳しく検証することで、CUC遺伝子がシュートの幹細胞活性を制御する仕組みを明らかにできると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では転写因子CUC1・CUC2・CUC3およびその下流で、茎頂分裂組織の成長パターンに影響を与えるKNOX遺伝子群とオーキシン関連遺伝子群との相互関係を明らかにすること、およびこれらの遺伝子群とシュート幹細胞との関係を明らかにすることを目的としている。今年度はCUC遺伝子がオーキシン経路のうち、特に生合成と極性輸送に影響を与えることを明確にすることができた。加えてCUC遺伝子と幹細胞の制御因子であるWUSとの関係を示唆する重要なデータを初めて得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CUC遺伝子がオーキシン経路に与える影響を詳細かつ包括的に明らかにした上で、オーキシン経路とKNOX遺伝子経路との関係を明らかにしていく方針である。以下の研究を予定している。 1)CUCがオーキシン経路の遺伝子を制御するメカニズムを明らかにするために、クロマチン免疫沈降による結合解析を行う。 2)オーキシンの応答に関わる因子の役割がまだ不明確なため、オーキシン応答の制御因子とCUC遺伝子との関係を明らかにする。 3)オーキシン関連遺伝子が茎頂分裂組織の成長方向および幹細胞に関連した遺伝子群の発現に与える影響を明らかにする。 4)CUCの制御下でオーキシンの生合成・極性輸送・応答を制御する各種遺伝子群について、KNOX遺伝子との関係を明らかにする。
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