研究領域 | 植物の生命力を支える多能性幹細胞の基盤原理 |
研究課題/領域番号 |
18H04844
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40339122)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生 / 栄養繁殖 / 植物 |
研究実績の概要 |
(R. aquaticaのゲノム解析) これまでの研究で、ドラフトゲノム情報(ゲノムサイズ440 Mbp, コンティグ数1797本)を得ていた。今回、Hi-C法により、15本の染色体配列(総塩基長414.3 Mbp)と、染色体にクラスタリングされない2043本のスキャフォールドを得ることができた。 (再生芽の解析) R. aquaticaの茎生葉の葉柄の基部には、腋芽とは別に栄養繁殖に利用される芽(再生芽)がついており、茎生葉が花茎から離脱すると成長して栄養繁殖する。このような再生芽の存在は珍しいため、形態学的な解析を行った。また、RNA-seq解析により、離脱による器官成長の誘導機構について解析した。 (葉片からの再生と幹細胞性維持機構の解析) 再生過程の経時的なRNA-seq解析の結果と、植物ホルモンの網羅的定量解析から、再生の初期にはオーキシンとジベレリン、後期のシュートの再生にはサイトカイニンが重要であることがわかった。現在、他の植物ホルモンの働きや、同定されている遺伝子群の機能解析を進めている。 (植物の再生促進因子の探索と応用)葉片をMS培地に置床すると、普段は再生してこない葉片の先端部側からの再生が促進されることがわかっていたので、MS培地中に含まれる再生促進因子を同定した。また、ケミカルライブラリーから、植物の再生や幹細胞製の維持に影響を与える化合物を探索するためのスクリーニングの準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Hi-C法によりR. aquaticaのゲノム情報の質を大幅にあげることができた。現在アノテーションなどをしているところであるが、今後の解析に必要なゲノム基盤は整ったといえる。また、再生過程のトランスクリプトーム解析についても、解析を進めており、生理学的な解析なども並行してすすめることで、再生過程における植物ホルモンの役割などを明らかにすることができた。 植物の再生促進因子の探索については、ケミカルスクリーニングの準備を進めており、今年度にはスクリーニングをスタートできる見込みである。 また、R.aquaticaの茎生葉には脇芽とは異なる再生用の芽がついていることを発見し、当初計画にはなかったが、形態学的な解析や発現解析をおこなうことができた。 以上の結果から、本研究は研究計画からみて、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究で整備できたゲノム情報を利用して、再生過程のトランスクリプトーム解析をすすめていく。とくに、再生後半におこるシュート再生に着目し、再生に関わる遺伝子群を同定したい。また、サイトカイニンがシュート再生には重要な役割を果たしているという結果が得られているので、サイトカイニンの役割についても詳しく解析する。 シロイヌナズナは、R. aquaticaのように葉の断面から完全な植物個体を再生することはないので、シロイヌナズナでもトランスクリプトーム解析を実施してR. aquaticaの結果と比較することで、再生に重要な遺伝子を同定する。 R. aquaticaが、茎生葉の基部につける再生芽については、比較的珍しいもののようであるため、詳しい解析をすすめる。 植物の再生促進因子の探索については、ケミカルスクリーニングを安定的におこなえる系を立ち上げて、初期スクリーニングを開始する。
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