Ras-PI3Kシグナルの制御ペプチドとして同定したRAPEL配列の結合因子探索から、ミトコンドリアタンパク質VDAC2を同定した。VDAC2は生化学的にRAPELと結合することが確認された。またノックダウンによりRas-PI3Kのエンドソーム局在、クラスリン非依存性エンドサイトーシス、およびエンドソームの成熟化が抑制され、過剰発現によりこれらが亢進した。すなわち、VDAC2はRas-PI3Kによるエンドサイトーシスの制御を正にコントロールする因子であることが明らかになった。 ミトコンドリアタンパク質であるVDAC2がどのようにしてエンドサイトーシス制御に関与するかについては、ライブセルイメージングによりミトコンドリアとエンドソームが一過性の接触を繰り返している現象を見出し、それを起点に解析を進めた。VDAC2をノックダウンすると両者の相互作用は有意に低下した。一方、早期エンドソームマーカーがミトコンドリアとの接触することから接触過程でエンドソームの成熟が進むことが示唆された。そこで、光遺伝学手法を用いてミトコンドリアとエンドソームの接触を誘発したところ、エンドソームの成熟化が進み、VDAC2ノックダウンでその成熟化が抑制された。したがってVDAC2はエンドソームとミトコンドリアのtethering factorであると同時に、その連携ゾーンにおける働きも重要であることが示唆された。 一方、他のミトコンドリアに局在する他のRAPEL結合因子としてGC1も同定された。GC1はVDAC2とは異なり、Ras-PI3Kシグナルを負に制御した。以上の結果はエンドソームとミトコンドリアの連携ゾーンでは正と負のコミニュケーションが同時に存在し、これにより緻密に機能が制御されている可能性が示唆された。
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