公募研究
分泌タンパク質や膜タンパク質は、ゴルジ体の出芽ゾーンで形成された膜輸送小胞に搭載され細胞の周辺部に輸送される。kinesin-1は順行性の長距離輸送を担う主要モーターであり、神経軸索で膜輸送小胞や細胞内オルガネラの輸送で重要な機能を果たしている。これまでに、kinesin-1の輸送膜小胞の受容体としてアミロイド前駆体タンパク質(APP)とアルカデインα(Alcα)を同定し解析を進めてきた。APPとAlcαは同じモーターで輸送されるが輸送速度が異なる特徴を示し、また、内容物のプロテオミクス解析からも独立性の高い輸送小胞である可能性が示されていた。2018年度までの解析から、APP小胞とAlcα小胞はそれぞれ独立した小胞として輸送されているが、kinesin-1と結合できない変異体Alcαを神経細胞に発現させるとAPP小胞にヒッチハイクして輸送される事が明らかになった。これは、ゴルジ体のAPP輸送小胞形成ゾーンとAlcα輸送小胞形成ゾーンが隣接している事を示唆し、通常は何らかの選択機構が働いてそれぞれ独自の輸送小胞を形成している可能性を示唆した。しかしながら、それぞれの輸送小胞に搭載される特徴的なカーゴ(積荷タンパク質)もヒッチハイクによる補償輸送を受けているかどうかは明らかではない。特徴的に搭載される分子の輸送とその分子が担う神経末端での機能の変化を解析することで、輸送小胞形成ゾーンが機能的に独立したゾーンとして存在するのかを明らかにする研究を進めている。次年度に向けてAlcαが特徴的に輸送する受容体の機能を輸送先の神経末端で解析することで、輸送小胞形成ゾーンの機能不全が神経機能変化に及ぼす影響を調べる.
2: おおむね順調に進展している
ゴルジ体での輸送小胞形成ゾーンに関しては、これまで解析がほとんどなされて来なかった。本研究では積荷が異なるが同じモーター分子が接続する2つの輸送小胞(APPとAlcα)に着目し、ゾーンの解析に取り組んだ。その結果、一つのカーゴ受容体をモーターに接続不能にすると、他のカーゴにヒッチハイクする事が明らかになり、それぞれの輸送小胞のゴルジにおける小胞形成ゾーンが近接している可能性が始めて示された。
kinesin-1に接続出来ないAlcα輸送小胞を作成すると、APP輸送小胞にヒッチハイクする事が明らかになり、それぞれの輸送小胞のゴルジにおける小胞形成ゾーンが近接している可能性が始めて示された。しかし、神経末端で機能発現する積荷もヒッチハイクされ機能補償を受けているかh明らかではない。H31年度は、Alcα輸送小胞に特徴的な受容体の機能を解析し、ゴルジ体における輸送小胞形成ゾーンの不全が機能発現に及ぼす影響を解明する。機能障害が認められる場合は、輸送小胞形成ゾーンは近接してはいるが機能的に分かれていると考え、より直接的なエビデンスを得るように努める。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of Biochemistry
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