研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
18H04853
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 邦律 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20373194)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | オートファジ- / 出芽酵母 / Contact site / 脂質輸送タンパク質 / 隔離膜 / Atgタンパク質 / オルガネラ形成 / オルガネラ・ゾーン |
研究実績の概要 |
真核細胞が栄養飢餓等のストレスにさらされると細胞内分解システムであるオートファジーが誘導される。オートファジーが誘導されると、細胞質に出現した小さな袋状の膜が伸展して隔離膜(以下IM)となり、被分解物を内包した球状の二重膜胞であるオートファゴソーム(以下AP)が形成される。応募者らの研究により、IMは小胞体とCOP II小胞形成に関わる機能領域であるER exit site(以下ERES)を介して相互作用していることが明らかとなった。その相互作用部位(IM-ERES contact site。以下IMECS)において、小胞体側にはERESが、IM側にはAtg2-Atg18複合体が近接して局在し、相互作用していることが知られている(Suzuki et al. (2013) J. Cell Sci.; Graef et al. (2013) Mol. Biol. Cell)。 我々は微生物科学研究所の野田展生博士・大澤拓生博士、東京工業大学の大隅良典博士・中戸川仁博士・小谷哲也博士との共同研究により、in vitroの実験でAtg2がリポソーム間で脂質輸送を行う活性を有することを発見した。また、この脂質輸送に欠損のある変異体では、AP形成が行われないことを見いだし、論文として発表した(Osawa et al. Nat. Struct. Mol. Biol. 2019)。本研究は、IM伸展の材料を供給する重要な分子機構を明らかにするものである。我々の研究室では脂質輸送に欠損のある変異酵母を作製し、オートファジー活性を測定するとともに、オートファジー関連構造体の形態定量解析を行った。 今後はこの脂質輸送活性がIM伸展のどの段階で必要とされるのかを解明していく予定である。この解析には我々の有する形態定量解析技術が威力を発揮すると期待している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究提案では、IMECSとVICSの機能を解析することで、IM伸展時に小胞体および液胞が如何にして連携してIM伸展を行っているかを解明することを目的とする。 我々は微生物科学研究所の野田展生博士・大澤拓生博士、東京工業大学の大隅良典博士・中戸川仁博士・小谷哲也博士との共同研究により、in vitroの実験でAtg2がリポソーム間で脂質輸送を行う活性を有することを発見した。また、この脂質輸送に欠損のある変異体では、AP形成が行われないことを見いだし、論文として発表した(Osawa et al. Nat. Struct. Mol. Biol. 2019)。本研究は、IM伸展の材料を供給する重要な分子機構を明らかにするものである。我々の研究室では脂質輸送に欠損のある変異酵母を作製し、オートファジー活性を測定するとともに、オートファジー関連構造体の形態定量解析を行った。 今後はこの脂質輸送活性がIM伸展のどの段階で必要とされるのかを解明していく予定である。この解析には我々の有する形態定量解析技術が威力を発揮すると期待している。また、IMECSの機能解析に加え、次年度はVICSの機能解析に取り組む予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を踏まえ、次年度ではIMECSの脂質輸送活性がIM伸展のどの段階で必要とされるのかを解明していくとともに、VICSの機能解析に取り組む。VICSはAtg17を含むタンパク質複合体が集積することで形成される。応募者の研究グループは蛍光顕微鏡で得られたVICS像の形態を数理科学的手法により解析するシステムを開発した(Kawaoka et al. (2017) Autophagy)。数十万個におよぶVICSの形態を解析した結果、VICSが2種類の形態を示すことが示唆された。VICSを構成するタンパク質をライブイメージングすることで、液胞膜上にVICSが形成される過程を可視化し、VICS形成のメカニズムに関する新たな知見を得る。
|