公募研究
トランスゴルジ網(TGN)は、ゴルジ体のトランス槽の外側に存在する網目状の構造で、積荷タンパク質の選別を行う、ポストゴルジ輸送網の玄関にあたるオルガネラである。一般的にはTGNはゴルジ体の一部と考えられてきていた。しかし、我々は植物細胞を用いた超解像ライブイメージングにより、TGNはゴルジ体のトランス槽に接して存在するGA-TGNとゴルジ体とは独立して存在するGI-TGN の2種類が存在すること、GI-TGNはGA-TGNの一部が解離することによって形成され分泌経路で機能することを既に見出している。そこで本研究では、植物における「TGNの輸送選別ゾーンの構築機構と動態」を明らかにするために研究をおこなう。H30年度は以下の研究をおこなった。(1)GA-TGNにおける分泌輸送ゾーンと液胞輸送ゾーンの動的観察TGN、AP-1、AP-4を異なる3色の蛍光タンパク質で可視化した形質転換体を超解像ライブイメージングにより徹底的に観察し、AP-1ゾーンが分泌経路で、AP-4ゾーンが液胞輸送経路で機能していることを見出した。(2)分泌輸送ゾーンから形成される分泌小胞の成熟機構の解明TGNの分泌ゾーンからどのように分泌小胞が形成されるかについてAP-1だけでなくクラスリンやR-SNAREであるVAMP721も同時に観察をおこなった。その結果、AP-1とクラスリンはほとんどおなじ挙動を示すのに対して、R-SNAREであるVAMP721は成熟過程で、AP-1およびクラスリンとは分離することを発見した。
2: おおむね順調に進展している
3種類の蛍光タンパク質を用いたマルチカラーイメージングの技術が安定してきており、順調に観察結果を得ることができた。特に、分泌経路の可視化は当初の予定以上に結果をえることができている。一方、液胞輸送経路の可視化については、形質転換植物の作成にも時間がかかっており、十分な観察までには至っていない。
引き続き分泌経路の超解像イメージングをおこなうとともに、液胞輸送経路の観察にも着手する。また、3色の蛍光タンパク質を発現する、観察用の形質転換ライン構築には6ヶ月ほどの時間を必要とため、前もって複数種のラインを準備するようにする。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件)
Methods in Molecular Biology
巻: 1789 ページ: 155~165
doi: 10.1007/978-1-4939-7856-4_12
eLife
巻: 7 ページ: pii: e34064
doi: 10.7554/eLife.34064
Plant Physiology
巻: 179 ページ: 519~532
doi: 10.1104/pp.18.01228