研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
18H04858
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / オートファジー / 分解 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、ミトコンドリアがオートファジーにより選択的に分解される現象である。マイトファジーが誘導されると、オートファゴソームという袋状の構造体がミトコンドリアを包み込むが、ほとんどのミトコンドリアはオートファゴソームより遙かに大きく、オートファゴソームが包み込むのはミトコンドリアのごく一部である。この過程を経時的に蛍光顕微鏡観察すると、ミトコンドリア内に分解されるべき領域が形成され、オートファゴソームはその部位だけを選択的に包んでいる様に見られる。一方で、マイトファジーが大きなミトコンドリア全体を分解してしまうことは少ない。このことは、ミトコンドリア内には分解されるべき運命の領域、即ち“分解ゾーン”と呼ぶのがふさわしい領域が存在すると考えられる。本研究では、この分解ゾーンがどのように形成され、どのような因子群で構成されるかを解明する。 ミトコンドリア分解ゾーンに関わる可能性のある因子を探索し、Atg43(未発表の新規因子)を発見している。さらなるミトコンドリア分解ゾーンに関わる因子を同定するために、Atg43にHisタグもしくはFLAGタグを付加して、免疫沈降し複数の共沈降される因子を同定した。現在、これらの因子がmitophagy及びミトコンドリア分解ゾーン形成に関わるかどうかについての検討をすすめている。 哺乳類の研究においても、分解ゾーンに集積していると思われる因子候補を同定した(未発表)。この因子が分解ゾーンに集積するメカニズムについて解析したところ、同一因子が多量体を形成している可能性が高いことが明らかとなった。また、これらの因子がリン酸化と思われる修飾を受けていることも明らかとなり、リン酸化修飾部位の決定およびリン酸化修飾と多量体形成との関連について研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究では、既に同定していたAtg43の解析を進めることが出来たことに加え、Atg43に結合する因子のプロテオミクス解析も完了している。今後は、プロテオミクス解析で同定された因子の中から、本当に重要な因子を決定する実験が必要となるが、その研究も遅延なく進められている。哺乳類の研究においても、研究対象とすべき因子の絞り込みに成功し、ミトコンドリア分解ゾーン形成機構にこの因子のリン酸化が関わる可能性も示唆できている。こうしたことから、本研究はおおむね順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究は、2018年度の研究で得られた、Atg43と結合する因子候補の中から、本当にAtg43と結合し、ミトコンドリア分解ゾーン形成に関わる因子を選抜する実験を行う。具体的には、同定した因子の遺伝子破壊株を作成し、遺伝子破壊によりmitophagyが不能となるかどうか、もしくはミトコンドリア分解ゾーンの指標の一つと考えているGFP-Atg32の凝集に影響するかどうかなどを調べることとする。哺乳類細胞の実験では、2018年度に同定した分解ゾーンに集積している因子のさらなる解析を進めることで、ミトコンドリア分解ゾーン形成機構の解明を目指す。 mitophagy誘導時にBafilomycin A1(オートファゴソームとリソソームの融合阻害)で処理すると、オートファゴソームがミトコンドリアを包み込んだ状態(マイトファゴソーム)で細胞質に蓄積する。このマイトファゴソームを細胞分画法に加え、Percollやスクロースによる密度勾配遠心を用いて精製し、プロテオミクスを用いて、マイトファゴソームに含まれるタンパク質が、一般的なミトコンドリアと異なっているかどうかについて検討する。こうしてタンパク質がミトコンドリア分解ゾーンの構成因子となっている可能性が高いため、それらのタンパク質をさらに解析し、分解ゾーンの真の因子を決定する。また、マイトファゴソームに含まれるミトコンドリアDNA(mtDNA)や脂質を精製し、mtDNAに変異が蓄積していないか、脂質が酸化されていないかなどについても研究する。 さらに、オルガネラゾーンに参画する計画研究班、公募研究班と連携し、mitophagyと他のオルガネラとの連携が見られるかどうか、特に小胞体を研究している研究グループと連携し研究を進めていく。また、蛍光顕微鏡を用いた研究でも、計画研究班の協力を得て、ミトコンドリア分解ゾーンをより高解像度に観察する手法を開発していく。
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