筋萎縮性側索硬化症(ALS)における、オルガネラゾーンとしての小胞体・ミトコンドリア接触部(MAM: mitochondria-associated ER membrane)の関与は、それぞれのオルガネラ異常仮説を統合的に説明できる病態機序として注目されている。これまでに代表者は、MAMに局在するタンパク質、Sigma1受容体(Sigma1R)に注目し、SIGMAR1、SOD1変異によるALSモデルで共通してMAMの破綻を見出したことから、MAMの破綻がALSにおける神経変性に広く共通する分子メカニズムとなる可能性を示してきた。本研究課題では、1) ALSの運動神経細胞における MAMの破綻に至る分子機構の解明、2)MAM破綻の下流経路の解明:神経変性に関わる分子カスケードの同定を目指す。 今年度は、MAMの状態を可視化、定量する技術の開発に取り組み、これまでに培養細胞においてMAMを蛍光(二量体化依存的GFP)または発光(分割ルシフェラーゼ)により検出する系の構築に成功した。さらに、ALS原因遺伝子発現ライブラリ(約20遺伝子)を用いて、MAMの破綻が多くのALS原因遺伝子で共通して惹起されることを見出した。さらに、MAM破綻に関わる候補分子を同定するため、MAM特異的タンパク質であるSigma1受容体の近傍分子を網羅的にビオチン化する系を構築した。来年度は、本実験系を用いてALS原因遺伝子により異常化するMAM局在タンパク質を質量分析により同定する計画である。
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