公募研究
(1) CKAP4がMAMの動態へ与える影響の解析:野生型およびCKAP4ノックアウト(KO)とCKAP4 KOにCKAP4を発現させたCKAP4レスキュー細胞に、MAMを標識するためのGFP-mitochondrial fission factor (Mff)と小胞体特異的な蛍光タンパク質(mCherry-Sec61b)を発現させ観察した。CKAP4 KO細胞では小胞体のシート構造が広がり、MAM の数が増加したが、これらの異常は野生型CKAP4を発現させることにより、野生型細胞と同じレベルまで回復した。CKAP4は100番目のシステイン残基がパルミチン酸化されるが、パルミチン酸化されない変異体(CKAP4 C100S)の発現では回復できなかった。(2) CKAP4によるMAMの構造制御機構の解析とMAMにおけるCKAP4結合タンパク質の同定:CKAP KO細胞に対してERの構造を変化させることが報告されている分子(reticulon, atlastin, lunapark)を発現させて、MAMに対する影響を確認した。reticulonの発現により、CKAP4 KO細胞のERの構造異常は回復し、MAMの数も野生型細胞と同じレベルまで回復した。MAMにおけるCKAP4結合タンパク質の同定を行うためにCKAP4 KO細胞にHA-FLAGタグ付きのCKAP4を発現させたレスキュー細胞を樹立した。(3) MAMの異常にもとづく疾患におけるCKAP4の役割に関する解析:MAMの形成異常が報告されている炎症性疾患におけるCKAP4の役割を明らかにするため、CKAP4 KOマウスに炎症を誘発する薬剤 (DSS) を投与した。しかし、CKAP4 KOマウスは野生型マウスと比較して腸管炎症に差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画に記載したCKAP4がMAMの動態へ与える影響やCKAP4によるMAMの構造制御機構の解析については、当初の予定通り完了した。MAMにおけるCKAP4結合タンパク質の同定とMAMの異常にもとづく疾患におけるCKAP4の役割に関する解析については既に予備的な結果は出ているので、継続して研究を行っている。これらの成果にもとづいて、「おおむね順調に進展している」と判断した。
(1) CKAP4によるMAMの構造制御機構の解析とMAMにおけるCKAP4結合タンパク質の同定:CKAP4によるMAMの構造制御機構を明らかにするため、CKAP4 KO細胞にタグ付きのCKAP4を発現させた細胞からMAMを含む分画を単離し、MAMにおけるCKAP4の結合タンパク質を探索する。得られた候補タンパク質を発現またはノックダウンさせ、MAMの形成や小胞体の構造、ミトコンドリアの機能に与える影響を解析する。(2) CKAP4-VDAC2相互作用によるMAMの機能制御機構の解析:CKAP4とVDAC2の相互作用によるMAMを介したミトコンドリアの機能制御機構を明らかにするため、VDAC2との結合に必要なCKAP4領域を決定する。CKAP4 KO細胞にVDAC2結合領域が欠損したCKAP4を発現させ、CKAP4 KO細胞で観察された表現型が回復するか否かを検討する。すなわち、CKAP4 KO細胞におけるミトコンドリアのATP産生能やミトコンドリアへのCa2+流入を測定する。また、CKAP4がVDAC2とIP3受容体の複合体形成を阻害するか否かを明らかにする。(3) パルミチン酸修飾によるCKAP4局在の動的変化がMAMの形成へ与える影響の解析:CKAP4のパルミチン酸修飾とMAMへの局在の関係を明らかにするため、CKAP4 C100SをCKAP4 KO細胞に発現させ、MAMへ局在化やMAMの形成、VDAC2との結合、ミトコンドリアの機能に与える影響を検討する。(4) MAMの異常にもとづく疾患におけるCKAP4の役割に関する解析:MAMの形成異常が報告されている神経変性疾患におけるCKAP4の役割を明らかにするため、CKAP4 KOマウスおよび野生型マウスを老齢になるまで長期間飼育し、運動協調能を測定する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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