研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
18H04865
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山本 真寿 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70802114)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オルガネラゾーン / 小胞体 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
小胞体とミトコンドリアという二つのオルガネラは、生体膜によって隔てられた独立した構造体であるとともに、互いが数10nm程度に近接した「接触領域」を形成することによって物質や情報を効率的にやり取りして協調的に機能している。本研究課題は、依然として不明な点が多い小胞体-ミトコンドリア接触領域(EMCS)の形成機構の解明を目指し、EMCS特異的な近接ビオチン標識法を構築し、EMCSに存在するタンパク質の特異的かつ網羅的な同定を行う。
本年度は、近接ビオチン標識法を担うAPEX2(改変型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)のEMCSへの標的化を行い、共焦点顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用いた局在解析によりAPEX2のEMCSへの局在を確認した。さらに、EMCS標的型のAPEX2による近接ビオチン標識反応の条件検討を行い、適切な条件を確立するとともに、実際にEMCSが特異的にビオチン標識されていることを確認した。そして、確立した条件に基づいて近接ビオチン化標識を行い、標識タンパク質をストレプトアビジンビーズによって単離精製し、LC-MS/MSによるプロテオーム解析を行った。解析の結果、小胞体-ミトコンドリア接触領域に局在すると考えられる既知のタンパク質が複数検出され、本実験系の有効性が示唆されるとともに、新規のタンパク質の同定に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施では、EMCS標的型APEX2を構築し、共焦点顕微鏡及び電子顕微鏡によってその局在を明らかにすることができた。また、このAPEX2を用いた近接ビオチン標識を行い、目的通りにEMCSを特異的にビオチン標識できることを確認した。プロテオーム解析の結果、このビオチン標識されたタンパク質群には既知のEMCSタンパク質が複数含まれており、EMCSに特異的なプロテオーム解析系が確立できたと判断した。また、プロテオーム解析の結果から、EMCSに局在すると思われる新規分子を同定することができた。以上の結果から、本年度の研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は同定した新規タンパク質について、その局在を明らかにするとともにEMCSの形成への寄与を中心に細胞生物学的解析を進める予定である。また、この新規分子と相互作用する分子を探索し、この新規分子を基軸とした新たな小胞体-ミトコンドリア接触領域の形成機構の解明を試みる。
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