真核細胞内に存在するオルガネラは、生体膜で区切られることによって個々の機能に特化したコンパートメントである。それらは独立に働くだけでなく、お互いが物理的に極めて近接した領域(接触領域)を介して協調的に機能していることが分かってきた。オルガネラ間接触領域は様々な細胞機能だけでなく、がんや神経変性疾患、代謝疾患などとの関与も報告されているが、そもそもオルガネラ間接触領域を形成・維持する因子や分子メカニズムについては不明な点が多い。 本研究では、申請者が独自に開発した「オルガネラ間接触領域への局在化法」と「近接ビオチン標識化法」を組み合わせることで従来の技術的な障壁を突破し、生細胞におけるオルガネラ接触領域の標識法とオルガネラ接触領域特異的存在するタンパク質の網羅的な解析法を構築した。この手法を用いて、小胞体-ミトコンドリア接触領域に存在する約500のタンパク質を同定し、これら候補分子から新規の小胞体-ミトコンドリア接触領域形成因子の同定に成功した。さらに、この因子が小胞体とミトコンドリア間のカルシウムイオンの輸送を担うことや小胞体の形態制御に重要な役割を果たしていることを見出した。 以上の結果は小胞体-ミトコンドリア接触領域の形成や機能の解析に新たな知見をもたらすとともに、本研究で確立した手法は他のオルガネラ接触領域にも応用でき、細胞内の様々なオルガネラ接触領域を形成する因子の探索を可能にするものと考えられる。
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