研究実績の概要 |
我々は、小胞体で初めて還元酵素ERdj5を発見し、小胞体関連分解における分解基質のジスルフィド結合を還元し、その還元活性がタンパク質品質管理、特に小胞体関連分解に重要であることを明らかにした(R. Ushioda et al. Science 2008、R. Ushioda et al. Mol. Biol. Cell. 2013)。さらに、ERdj5の新しい機能として、小胞体内腔のカルシウム調節にも関わることを明らかにし(R. Ushioda et al. PNAS 2016)、東北大学稲葉研との共同研究でSERCA2bカルシウムポンプの構造を世界で初めて解明した(Inoue et al. Cell reports, 2019)。還元酵素ERdj5との結合因子の同定に繋げた。ERdj5は酸化酵素Ero1と結合し、酸化的フォールディングで生じる電子がPDIを介してEro1に受け渡され、ERdj5へ供給されるという小胞体内腔の電子伝達ではこれまで想定されてこなかった電子伝達経路を明らかにした(Uegaki et al., 2019 In preparation)。 小胞体で形成されたレドックスゾーンが、電子リレーによるネットワークを介して、情報伝達としての「連携ゾーン」を形成するのではないか、つまり、レドックスゾーンから発信する電子リレーによる情報が別の情報へと変換され、他のオルガネラの機能や恒常性維持に関わるのではないかと想定した。この観点から、小胞体-ミトコンドリア、小胞体-ゴルジ体との連携ゾーンとしてのレドックスゾーンの重要性を明らかにした。レドックスゾーンを担う中心因子である還元酵素ERdj5の欠損では、サイトゾルのカルシウム濃度が異常上昇し、ミトコンドリアの形態異常が起こることを明らかにした(Yamashita et al. In preparation)。
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