公募研究
S-アシル化脂質修飾は、酵母から動・植物まで保存された普遍的な翻訳後修飾で、タンパク質の輸送や機能を制御する。S-アシル化反応は可逆反応であり、アシル化、脱アシル化両反応のバランスが外界刺激により制御されている。多種多様なS-アシル化タンパク質は、様々なオルガネラ膜や細胞膜に特異性をもって局在化するが、興味深いことに、私共が単離したS-アシル化関連酵素群も、小胞体やゴルジ体のみならず、エンドソームや細胞膜といった多様な細胞内局在を示す。そこで、私共は“タンパク質合成直後の小胞体やゴルジ体における選別輸送に加えて、細胞膜のような最終到達地においても、S-アシル化酵素と脱S-アシル化酵素が協調して「S-アシル化修飾ゾーン」を形成し、タンパク質の動的な局在制御を担っている”という仮説を検証する。本研究では、神経細胞のシナプス膜をモデルとして、その形成と機能発現における「S-アシル化修飾ゾーン」の役割を解明する。平成30年度は、シナプス足場タンパク質PSD-95の脱S-アシル化酵素として同定したABHD17の脳組織や神経細胞における局在を、超解像顕微鏡や電子顕微鏡を用いて明らかにした。ABHD17はシナプス膜や細胞膜を中心に分布していると考えていたが、シナプス膜と共に、様々なオルガネラ膜やエンドソーム膜上に分布していることが明らかになった(未発表)。また、ABHD17の制御機構を解明するために、ABHD17に結合する分子を、特異性を担保した免疫沈降法と質量分析法を組み合わせて検討した。
2: おおむね順調に進展している
シナプス後部膜(PSDゾーン)形成に重要な役割を果たす足場タンパク質PSD-95のS-アシル化サイクルに焦点を当て、“PSD-95脱アシル化酵素ABHD17”の性状解析、制御機構、生理機能の解明を目指した。平成30年度の目標に掲げていたABHD17の性状解析(局在、相互作用分子の解明)は、概ね予想通り進展、達成した。また、脱S-アシル化プローブを用いて、神経細胞における脱S-アシル化活性を生細胞レベルで可視化することに成功した。
平成31年度は、引き続きABHD17の性状解析を推し進める。平成30年度に得られた多数の相互作用分子群の生理的意義(基質、活性制御分子、局在決定分子等)の解明を進める。また、ABHD17の脳組織における生理的役割を明らかにする。さらに、S-アシル化酵素ZDHHC2と脱S-アシル化酵素ABHD17の相互作用についても検討する。これまでの知見から両者の間には負のフィードバックループの存在が想定されるが、その関連性を実験とモデルを駆使し明らかにしていく。さらに、ABHD17の酵素活性を光遺伝学的に急性活性化(sudden-ON)するための分子プローブの開発を行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)
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http://www.nips.ac.jp/fukata/
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