研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
18H04874
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
立川 正志 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30556882)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生物物理 / オルガネラ / パターン形成 |
研究実績の概要 |
ERにおいて翻訳された膜タンパク質や分泌タンパク質がゴルジ体へと送られる場所となるER Exit Site(ERES)が、どのように形成されるか、数理モデリングの手法を用いて調べた。ERESをER膜上での分子パターンとしてとらえ、ERESに必須であるタンパク質の集団からなる反応モデルを作成し、そのパターン形成の様相を調べた。中心となる分子として低分子量Gタンパク質であるSar1-GTPとその活性化因子(GAP)であるSec23/24に注目し、それらの反応を中心に、Sar1のGEFであるSec12やCOPIIコートを形成するScc13/31の効果を関数として入れ込むことで、2変数からなる反応拡散方程式を作成した。この方程式にはSec23/24のGAP活性によるSar1-GTPの膜からの遊離と、Sec23/24(とSec13/31)の集積による膜上拡散の低下が取り入れられており、これらの効果のバランスにより、適切なパラメーター値でSec23/24が集積する安定なドメインの形成すること、複数のドメインが独立に安定化することを実現した。 また、計画班の清水重臣教授・桜井一助教らとの共同研究として、ゴルジ体トランス槽がストレス応答として閉鎖する現象の膜シミュレーションを行った。ストレス時にゴルジ体からトランス槽の縁安定化分子(clathrin)とトランス槽をつなぎ留めている接着分子(GRASP65)が遊離することを仮定し、その条件下での膜の動態を調べた。特に2層のトランス槽の閉鎖後の位置関係に注目し、最外槽が小さい場合に入れ子状になることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初より計画していたERESの分子パターンとしてのモデル化は十分進展し、ERES構成分子が集積する安定なドメインの形成する、複数のドメインが独立に安定化する、などERESの特徴を再現するモデルを構築することができた。 また、領域に参加したことにより新しい共同研究が発足し、清水重臣教授・桜井一助教らとゴルジ体形態の変化に関する実験を説明するシミュレーション研究が進展したことは、望外の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、前年度に作成したERESの分子パターンモデルを、三次元膜形態シミュレーターへ実装することで、膜上の分子パターン形成と膜形態の協奏によりどのようなダイナミクスが生成されるか調べる。特にそのダイナミクスがERESの形成と成熟にどのような影響を及ぼすか詳細に調べる。 また、前年度より開始された共同研究を進展させ、ストレス応答としてのゴルジ体形態変化を、促進させる物理的要因を調査する。
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