前年度に行ったオス化の程度が異なるオス決定因子Dsx1変異体を用いたRNA-seqデータから、Dsx1と相関のある449個の遺伝子を見出した。これらの遺伝子の発現は Dsx1の変異に依存して変化しており、Dsx1の下流因子であることが示唆された。興味深いことに、これらの遺伝子の大半(398個)は Dsx1 発現と負の相関を示しており、Dsx1によって直接的または間接的に抑制されていることを示唆された。RNA-Seq解析において見いだされたメスで高発現する遺伝子群には「輸送」と「代謝」に関わる遺伝子が多く、これらの中にはアミノ酸や糖の生合成遺伝子が多く含まれていた。一方で、オスで高発現する遺伝子群には、「シグナル伝達経路」に関係する遺伝子が多かった。この結果は、Dsx1が転写因子として複数のシグナル伝達経路を活性化して器官形成をオス型に向かわせる一方で、抑制因子として代謝を低下させていることを示唆している。以上の解析から、性スペトラム上の位置を変動させるDsx1の下流で働く因子をリストアップすることができた。 一方で、 Dsx1 を活性化する長鎖ノンコーディングRNAの性スペトラム上の位置決定における役割を明らかにするために、長鎖ノンコーディングRNAに結合するタンパク質を探索も行った。長鎖ノンコーディングRNAのコア配列に結合するタンパク質をトラップして質量分析を行い、2つの結合タンパク質を見出すことに成功した。
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