哺乳類の雌雄(男女)は体のサイズをはじめとして、一見して容姿で見分けられるほど様々な部位で異なる表現型を示す。この表現型の違いはほとんどがY染色体の有無によって決定されている。主にY染色体上にあるSry遺伝子が精巣分化を誘導することで、精巣からのホルモン分泌を起点とする全身レベルでのドミノ倒し的な雄への分化が引き起こされる。それでは、Sry以外のY染色体上の遺伝子は一体どのような機能を持っているのだろうか? 性スペクトラムへ影響するのだろうか? そこで本研究では、Y染色体上の様々な遺伝子についてTriple CRISPR法を用いてノックアウトマウスを作出し、それらの性的表現型を理研BRCの表現型解析パイプラインに乗せることで、網羅的かつ定量的に解析することで、各器官レベルでの性スペクトラムにどの程度Y染色体上遺伝子が関わるかを網羅的かつ定量的に明らかにすることを目的としている。 本年度はY染色体上の10個のユニークな遺伝子についてTriple CRISPR法によってノックアウトマウスを作出し、それらのマウスおよび野生型の雌雄マウスの性的表現型を理研BRCの表現型解析パイプラインに乗せて網羅的かつ定量的に解析した。その結果、野生型の雌雄マウス間に存在する新規に記載するべき性スペクトラム表現型(顔面相貌・骨格および臓器サイズ・BMIなどのボディバランス)をいくつも発見した。さらにY染色体上遺伝子のノックアウトによって変動する形態的な性スペクトラム表現型(体重・体長・BMI)も同定した。現在これらの結果を論文として発表する準備を進めている。
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