公募研究
がんの悪性化には「細胞文脈」が重要な役割を果たす。本研究では、細胞文脈(タンパク質コード領域)のみならず行間(非コード領域)のエピゲノム、トランスクリプトーム情報と表現系(フェノーム)であるメタボローム、リン酸化プロテオームのオミクス統合数理ネットワークモデルを構築し、腫瘍微小環境によるがん悪性化の本質的な理解を情報解析と分子腫瘍学的手法の融合から実現し、臨床検体に応用することで、がんの俯瞰と攻略を目指し「がん悪性化」と「進化と多様性」を規定する「細胞行間」の解読のための研究を行った。(1)腫瘍微小環境における非コード長鎖RNAのがん悪性化機構の検討:近年、ヒトゲノムからタンパク質をコードしない長鎖非コードRNA(LncRNA)が多く転写され、がんの悪性化に寄与することが報告されている。申請者は、領域内の共同研究によりRNASeqから網羅的にlncRNAの転写を定量する方法を開発し、低栄養で血管新生や腫瘍増殖に寄与するncRNA(JHDM-AS1)を発見し報告したが、本研究では、この成果を発展させlncRNAの網羅的発現データを用いた統合的な解析から、がん悪性化における影響の検討を行った。(2)腫瘍微小環境における非コード領域のがん悪性化機構の検討:LncRNAの解析に加え、タンパク質非コードゲノム領域には、遺伝子発現をエピジェネテックに制御するエンハンサーやスーパーエンハンサー領域が存在する。申請者は、遺伝子発現、H3K27Acのヒストンマークとクロマチン相互作用データを統合し、腫瘍微小環境における非コード領域のがん悪性化機構の解明を行い、低pHや低栄養でがん悪性化に寄与する可能性がある代謝酵素が遠隔クロマチンの相互作用によってエピジェネチックな発現制御が関与している可能性を見出した。これらの制御エレメント、及び、制御因子候補を新たに発見した。
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すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件) 図書 (2件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 20 ページ: 5682
10.3390/ijms20225682.
Cell Reports
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