公募研究
BRCA1/2遺伝子、MEN1遺伝子は、いずれもがん抑制遺伝子で機能喪失型の遺伝子変異によりHBOC、MEN1型をそれぞれ発症する。MLL遺伝子はヒストンメチル化酵素で血液の発生に必須の機能を持つ遺伝子であるが、転座により融合型MLL遺伝子が形成、活性化されると急性リンパ性白血病(ALL)の原因となり、これはがん遺伝子と呼ばれるグループに属する。MEN1遺伝子が作り出すタンパク質MeninとMLL遺伝子が作り出すタンパク質MLLとが相互作用(結合)し血液発生を制御する。Meninは、転写因子をクロマチン修飾酵素複合体、特にH3K4メチル基転移酵素MLL1およびMLL2に連結し、転写調節に関与する。MLLは、MLL1~MLL4, SET1AおよびSET1Bを含むファミリーを形成し、ヒストンH3 Lys4を特異的にメチル化(H3K4me3)し、クロマチン構造をオン型に変換することにより、造血および発生に関与する遺伝子の転写調節に中心的役割を果たす。我々はBRCA2遺伝子が作り出すBRCA2タンパク質がヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)を介してMLLファミリーに結合することを見出していた。これらを統合することにより、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、多発性内分泌腫瘍症1型、白血病の原因遺伝子が一堂に会し、細胞の発がん抑制に係る転写を調節しているという驚くべき構図が再確認された。BRCA2は、DNA損傷修復機能を主とする多機能分子であるが、これまで、BRCA2の転写制御への関与は不明であった。そこで、本研究では、BRCA2のS期染色体上の局在位置から、BRCA2がヘテロクロマチンタンパク1(HP1)を介してH3K9me3に結合、さらにMLL複合体(MLL1, MLL2)に結合すること、及びその結合部位を見出した。
2: おおむね順調に進展している
2018年度計画は、課題1:BRCA2 と HP1 の結合部位の同定、BRCA2 と MLL 複合体の結合部位の同定、課題2:3者複合体が協働で制御する転写の下流シグナルの検出である。課題1は、すでにデータを得ており、課題2は、各分子単独ノックダウン、2分子組合せノックダウン、3者同時ノックダウンの解析を計画、すでにデータは得ており、得られた網羅的シグナル情報の情報科学的解析を進めている。以上より、概ね順調と判断した。
計画通り、MLL ファミリーによる H3K4 のメチル化修飾への BRCA2 の役割を明らかにするとともに、miRNA-mRNA 統合解析で見出した候補分子と lncRNA 情報から関連する lncRNA を選定、その調節機能を明らかにする予定である。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Nat Commun.
巻: 9 ページ: 4083
10.1038/s41467-018-06581-8.
Cancer Sci.
巻: 109 ページ: 2567-2575
10.1111/cas.13698
巻: 109 ページ: 893-899.
10.1111/cas.13530.
Int J Clin Oncol.
巻: 23 ページ: 36-44
10.1007/s10147-017-1182-2
http://www.tmd.ac.jp/mri/mgen/index.html