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2018 年度 実績報告書

BRCA関連遺伝子の変異による乳がんの発がん機構の解明

公募研究

研究領域がんシステムの新次元俯瞰と攻略
研究課題/領域番号 18H04900
研究機関京都大学

研究代表者

笹沼 博之  京都大学, 医学研究科, 准教授 (00531691)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワードエストロゲン / BRCA1 / DNA二重鎖切断修復 / トポイソメラーゼ2型 / 乳がん
研究実績の概要

エストロゲン受容体陽性乳がん細胞、MCF-7細胞を使いBRCA1欠損細胞を作製した。この細胞では、エストロゲン曝露によってできるDNA切断修復に欠損があることを明らかにした。エストロゲン曝露によってできるDNA切断は、トポイソメラーゼ2(Top2)が原因であることを、Top2欠損細胞を作製して証明した。これらのことから、エストロゲンの細胞増殖促進作用に加え、BRCA1欠損によってエストロゲンがDNA毒性を持つことを2018年11月に米国科学アカデミー紀要に発表した。エストロゲン曝露により細胞増殖が促進されるが、Top2によるDNA切断との関係は不明である。本研究目的である、「エストロゲン曝露による転写変動」と「Top2によるDNA切断」との関係を明らかにすることを現在行なっている。エストロゲン曝露による「Top2によるDNA切断」部位を同定する実験手法の最適化を行なった。Top2によって切断されたDNA末端には、Top2が共有結合している。ゲノムDNAを超音波破砕によって断片化したのち、DNAに共有結合したTop2を免疫沈降によって精製する。エストロゲン曝露したBRCA1欠損MCF-7細胞を溶解、超音波破砕したのち、抗Top2抗体によってTop2-DNA複合体の精製を行なった。精製した複合体からTop2をタンパク質分解酵素によって消化後、DNAを次世代シークエンサーで解析したところ、エストロゲンに応答したシグナルが見られなかった。その理由として、細胞抽出液中に大量に存在するDNAに共有結合していないTop2が、Top2-DNA複合体の免疫沈降効率を低下させた理由が考えられる。免疫沈降前に、大量に存在するDNAに共有結合していないTop2を超遠心によって除去することによって、「Top2によるDNA切断」部位を同定する実験手法の最適化を完了させる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

エストロゲン曝露による「Top2によるDNA切断」部位を同定する実験手法の確立を目的に、Top2によって切断されたDNA末端には、Top2が共有結合している。ゲノムDNAを超音波破砕によって断片化したのち、DNAに共有結合したTop2を2回の免疫沈降によって精製することを計画した。2回免疫沈降を行う理由は、精製度を上げるためである。この精製したDNA断片を次世代シークエンサーによって解析したところ、エストロゲンに応答したDNA 切断部位のピークが観察されなかった。その理由は、2つある。一つは、細胞抽出液中に大量に存在するTop2が、Top2と共有結合しているDNA断片の免疫沈降効率を大きく低下させたこと、もう一つは、1度目の免疫沈降時にTop2と共有結合しているDNA断片を溶出する目的に使用したSDSが、2度目の免疫沈降時の抗原抗体反応を阻害した可能性である。我々の使用しているTop2抗体は、溶液中のSDSに感受性であること確認した。そのため、免疫沈降を行う前に、細胞抽出液中に大量に存在するTop2を除去する手法を考えている。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況で記載した問題点を解決する目的で、次の実験を計画している。1、細胞抽出液中に大量に存在するTop2を除去するために、細胞抽出液を作ったのち、塩化セシウム溶液を使った超遠心を行う。ペプチド分子は、密度が軽いため塩化セシウム層に入らないが、Top2が共有結合したゲノムDNAは塩化セシウム層を通過し超遠心によって沈殿する。予備実験を行ったところ、この超遠心を行うことで、Top2が共有結合したゲノムDNAだけを精製できることを確認した。Top2が共有結合したゲノムDNAを超音波破砕によって断片化する。断片化したゲノムDNAから抗Top2抗体を使い、Top2-DNA複合体を精製する。Top2-DNA複合体が精製できたかどうかは、次の方法で調べる。免疫沈降物に対しDNA分解酵素処理によってTop2-DNA複合体のDNAを分解する。SDS-PAGEによってTop2のバンドが検出できれば、精製ができたことになる。DNAシークエンス解析は、引き続き共同研究先であるアメリカスローンケタリング癌研究所のScott Keeney博士と共同研究で行う。Keeney博士は、減数分裂期に機能するTop2(Spo11)-DNA複合体の精製に成功した実績があるため、実験手技の最適化に関して適宜議論を行いながら、研究を推進できる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Memorial Sloan-Kettering Cancer Center
  • [雑誌論文] PDIP38/PolDIP2 controls the DNA damage tolerance pathways by increasing the relative usage of translesion DNA synthesis over template switching2019

    • 著者名/発表者名
      Tsuda M, Ogawa S, Ooka M, Kobayashi K, Hirota K, Wakasugi M, Matsunaga T, Sakuma T, Yamamoto T, Chikuma S, Sasanuma H, Debatisse M, Doherty AJ, Fuchs RP, Takeda S
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 14 ページ: e0213383

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0213383

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] BRCA1 Haploinsufficiency Is Masked by RNF168-Mediated Chromatin Ubiquitylation2019

    • 著者名/発表者名
      Zong D, Adam S, Wang Y, Sasanuma H, Callen E, Murga M, Day A, Kruhlak MJ, Wong N, Munro M, Ray Chaudhuri A, Karim B, Xia B, Takeda S, Johnson N, Durocher D, Nussenzweig A
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 73 ページ: 1267-1281

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2018.12.010

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] SUMOylation of PCNA by PIAS1 and PIAS4 promotes template switch in the chicken and human B cell lines2018

    • 著者名/発表者名
      Mohiuddin M, Evans TJ, Rahman MM, Keka IS, Tsuda M, Sasanuma H, Takeda S
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 115 ページ: 12793~12798

    • DOI

      10.1073/pnas.1716349115

    • 査読あり
  • [雑誌論文] BRCA1 ensures genome integrity by eliminating estrogen-induced pathological topoisomerase II?DNA complexes2018

    • 著者名/発表者名
      Sasanuma H, Tsuda M, Morimoto S, Saha LK, Rahman MM, Kiyooka Y, Fujiike H, Cherniack AD, Itou J, Callen Moreu E, Toi M, Nakada S, Tanaka H, Tsutsui K, Yamada S, Nussenzweig A, Takeda S
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 115 ページ: E10642~E10651

    • DOI

      10.1073/pnas.1803177115

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] BRCA1-Mre11 ensures genome integrity by eliminating estrogen-induced pathological Topoisomerase II-DNA complexes2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Sasanuma
    • 学会等名
      5th HiHA International Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] BRCA1 ensures genome integrity by eliminating estrogen-induced pathological Topoisomerase II-DNA complexes2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Sasanuma
    • 学会等名
      第41回分子生物学会
  • [学会発表] BRCA1は、静止期細胞においてTop2依存的なDNA二重鎖切断修復に関与する2018

    • 著者名/発表者名
      笹沼博之
    • 学会等名
      第90回遺伝学会

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公開日: 2019-12-27  

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