腎尿路がん(膀胱癌・腎癌)は米国NCIが示す世界的なcommon cancerであり、がん免疫療法では先駆的立場である。Nivolumab及びPembrolizumabは固形癌で先駆けて承認され、腎尿路がんの知見は癌研究に大きな波及効果を有する。本研究は、癌根治を妨げとなる腫瘍内不均一性を1細胞レベルのシングルセルRNAシークエンスで解析し、難治性である腎尿路がんを克服する新しい分子基盤を構築したい。得られる腫瘍内不均一性の全容は、ライトシート顕微鏡により立体的に可視化し、特に治療耐性を促すサブクローン“癌幹細胞”が生息する“癌幹細胞ニッチ”の立体構造を明らかにする。2019年度は、この研究基盤として、ライトシート顕微鏡の新規イメージングパイプラインであるDIIFCO(diagnosing in situ hybridized and immunolabeled fresh or fixed cleared organs)法を開発した。DIIFCO法は、組織透明化法に独自の免疫染色・in situハイブリダイゼーション法を組み合わせ、1細胞レベルで腫瘍立体構造が保持された状態で、高解像度なシングルセルカウント・タンパク/RNA発現の同時解析を世界で初めて可能にした。腫瘍空間におけるRNA可視化は、シングルセルRNAシークエンスの再現にも重要である。さらに、不均一な上皮間葉転換や腫瘍内免疫浸潤もミクロなレベルで可視化されるが、我々は特に立体的な癌幹細胞ニッチ解明に不可欠なイメージングツールと考える。シングルセルRNAシークエンスにおいては前年度に引き続き、同種移植に基づくマウス腫瘍塊からの癌細胞・免疫細胞の1細胞単離プロトコール作成と改良に従事した。シークエンス前に細胞が堅固に維持された状態で、単一細胞化が可能となった。基礎研究の成果を検証する臨床データの整備も進められた。
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