研究領域 | 海洋混合学の創設:物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動の解明 |
研究課題/領域番号 |
18H04925
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
日高 清隆 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (70371838)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋混合 / カイアシ類 / 産卵速度 |
研究実績の概要 |
1. 生殖腺発達段階と産卵速度の関係の取得 我が国周辺の大陸棚上での優占種の一つであり、ノープリウス幼生がマイワシ・ウルメイワシ仔魚の主要な餌料となっていることが報告されているカイアシ類Calanus sinicusを対象として、相模湾を中心として海洋観測と飼育実験を行い、生殖腺発達段階と産卵速度の関係式を得た。また、土佐湾沖で採集された時系列試料の生殖腺発達段階を観察し、この関係式を用いて産卵速度を復元した。 2. 混合による生産促進域の候補の抽出と、既往データの解析によるプランクトン生産促進の検証 本学術領域研究でのこれまでの成果も踏まえ、黒潮の流路上にある地形性湧昇域として薩南(トカラ海峡)と伊豆海嶺域を選定した。薩南海域については上述のとおり、下流域にあたる土佐湾沖でのカイアシ類産卵速度の復元を行った。 伊豆海嶺周辺については、植物プランクトン・動物プランクトンそれぞれについて生産促進を検証した。植物プランクトンについては、衛星海色データを解析し、全体としては本州からの距離が離れるとともに海表面クロロフィル濃度が減少すること、一方で沖合域にその関係から離れたデータがあり、それらは伊豆海嶺周辺に分布していることを確認した。動物プランクトンについては、水産庁による産卵調査で得られたプランクトンネット採集物の湿重量データと、それら採集物の画像解析で得られたカイアシ類分布量データを解析した。両データとも本州から離れるに伴って減少し、植物プランクトンに見られたような沖合域での増加は見られなかった。伊豆海嶺域の下流側で増加が見られた観測点は房総半島沿岸に位置したため、伊豆海嶺域での植物プランクトン増殖に由来するものか結論づけられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) Calanus sinicus について、生殖腺の観察から産卵速度を復元する手法を開発した。 2) 既往データの解析から、黒潮域の主要な湧昇域の一つである伊豆海嶺域について、植物プランクトンでは生産の促進が確認された一方、動物プランクトンでは生物量の増加が湧昇によるものか確定出来なかった。これは、動物プランクトンにおいて、餌環境から生物量の増加まで、時空間的に間隔が大きくなっていることが原因と考えられた。 以上から、議論として未解決な部分はあるものの、手法の開発・サンプルの準備には問題が無いといえ、順調に進捗していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度の動物プランクトン分布量を対象とした解析においては、湧昇域周辺での生産促進を確認出来なかった。H31年度は、好条件下でより短期間に反応すると考えられる産卵速度の時空間変動を分析することで、湧昇による栄養塩供給・植物プランクトン生産の影響を検証する。
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