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2018 年度 実績報告書

てんかん脳波の数理的特徴付けと発作予測に向けて

公募研究

研究領域非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解
研究課題/領域番号 18H04929
研究機関北海道大学

研究代表者

行木 孝夫  北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40271712)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワードてんかん / 時系列解析 / 力学系 / カオス理論
研究実績の概要

研究実績の概要は次の通りである。
池田班から提供された広域周波数帯域ECoG記録脳波10患者データについて、6患者に関して発作時高周波振動におけるサークルマップ型の力学系を発見した。この力学系は次のように得られるものである。まず脳波データの差分を取り、差分についての時間遅れ1ステップによるローレンツプロットを作る。高周波振動を観測する時間間隔においてはトーラス型の軌道を得ることができた。このトーラス型の軌道から角度方向についてのローレンツプロットを繰り返し、角度方向に関する力学系を非線形時系列解析によって得ることができたものである。患者1の示す高周波振動についてはサークルマップ型の力学系のパラメータを決定することもできている。
この高周波振動は発作時に0.2秒程度の生起を繰り返す。生起を繰り返すダイナミクスについては検討中である。
また、差分時系列に対するシンボリックトランスファーエントロピーに関して協力研究者の田所とともにPt1の各ch間で計算した。トランスファーエントロピーは2つの時系列間に存在する情報の流れを定量化するものであるが、必要な計算資源が膨大になる。これを単純化してシンボルによる情報の流れを与えるものがシンボリックトランスファーエントロピーである。差分時系列に対するシンボリックトランスファーエントロピーは比較的一様であり、焦点電極の関わる場合は発作間欠期てんかん性徐波の生起と同期している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

予定した研究計画の進捗状況は次の通り順調である。
既に結果の出ていた患者1, 患者2の脳波データにおけるサークルマップ型力学系の存在を示した手法と同様に、新たに池田班から提供された広域周波数帯域ECoG記録脳波8患者データについて、6患者に関して発作時高周波振動におけるサークルマップ型の力学系を発見した。先行して解析した2患者についての結果が特殊なものではなく、普遍性を持つことが示唆されたと考えられる。
差分時系列に対するシンボリックトランスファーエントロピーに関して協力研究者の田所とともに解析した結果、脳波波形から得られるトランスファーエントロピーに比較すると非発作時は一定値を保つ挙動を示し、焦点のslow shiftに対してよく反応する結果が得られた。
非発作時の差分時系列は正規分布によってよく近似できることを用い、正規分布のカルバックライブラー情報量によるred slowの検出を試みた。これは研究計画にない試みであるが、正規分布間のカルバックライブラー情報量は平均値と分散のみによって決まるため、計算を極めて軽量に遂行できる。患者1の基準電極と各電極間のカルバックライブラー情報量はslow shift および red slowによく反応することが確認できた。パワースペクトル残差による焦点の同定とともに用いることで、red slowの発生頻度などを統計的に高精度に判定できる可能性がある。
以上の観点から、研究計画にない成果を含み、計画以上に進展しているものと判断する。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進計画を下記に示す。(1)高周波発振現象における非線形振動を説明する離散力学系を非線形時系列解析の手法から決定する 。(2)発作間欠期てんかん性徐波のマーカーとしてパワースペクトルの対数スケールにおける最小自乗残差を適用する。(3)ECoG記録にお ける観測部位間の相互作用をトランスファーエエントロピーおよびカルバックライブラー情報量を用いた双方向型ネットワークとして定式化し、 高次元結合形力学系によるモデル構築を試みる。全計画を通じ、池田班から提供されている10患者データを用いて解析を進める。
(1)に関しては、サークルマップ型の離散力学系を原型とし、そのパラメータを決定する。パラメータ決定には重み付きの最小自乗法を用い る。重みについては時系列が生成する力学系の不変測度を打ち消すような重みを定義する。力学系のパラメータと時系列の重みを記述する関数 形を同時に決定する点が重要である。 (2)に関しては、高周波発振と長周期の徐波とが共起する発作間欠期てんかん性徐波のマーカーとして、パワースペクトルの対数スケールにおける最小自乗残差を確立する。患者1においては最小自乗残差が一定の閾値を一定時間以上継続して下回る頻度がてんかん焦点を特定してい ることを発見している。これと同時に、差分時系列を正規近似して基準電極とのカルバックライブラー情報量を与えることで、高周波発振と徐波の共起を精密に判定する。 (3)に関しては、すでにトランスファーエントロピーの評価を焦点間において得ている。発作直前までほぼ一様に振る舞うトランスファーエ ントロピーが発作時に大きく変動することがわかっており、発作間欠期と発作時の相互作用が異なることを解析する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Relation between spatio-temporal patterns generated by two-dimensional cellular automata and a singular function2019

    • 著者名/発表者名
      Akane Kawaharada and Takao Namiki
    • 雑誌名

      International Journal of Networking and Computing

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] Probing epileptogenesis using mathematical models2018

    • 著者名/発表者名
      Takao Namiki
    • 学会等名
      Advanced ECoG/EEG and Analysis in Epilepsy
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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