本研究課題の目的は軸索神経活動の発振状態や同期化と行動との関連を調べ、文脈依存的な同期化などを探索することである。2018年度は視床から一次運動野へ投射する軸索の神経活動と行動に関する変数との関連性が大脳皮質の層により異なることを見出し、さらに皮質軸索イメージングを行いながら皮質下で光刺激を行い光刺激誘導性の軸索活動を観察するなどして、これらを国際誌に発表した。今年度は、これらの技術で観察された軸索発振現象と電気生理的な発振現象との関係を明らかにするため、皮質全層から記録を行う事の出来る多点電極を持つ細胞外記録法の導入と実験系の立ち上げを行った。この細胞外記録法を学ぶために、オシロロジー領域の支援を受けてロンドン大学でのトレーニングコースに参加した。また上記、一次運動野における軸索活動と行動連関の論文において示唆された大脳基底核回路と小脳回路の依存関係について、神経回路モデルを立てて、実験結果をうまく説明することができたので、これらの結果について投稿準備中である。独立して研究室を立ち上げ、イメージング実験は共同研究ベースで行う事となったが、電気生理実験に加え、これまでのデータの解析を継続している。現在の研究室では行動中の生体を用いた多細胞の電気生理が可能となったため、今後はイメージングや光刺激実験なども立ち上げ、これまでも行ってきた神経活動と動物行動の連関を明らかにする実験を継続し、その合理的な解釈を可能とするモデル化研究も発展させる予定である。
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