公募研究
本研究では、パーキンソン病(PD)の霊長類モデルを用いて、大脳皮質、大脳基底核、視床、および小脳を含む広範な神経ネットワークから単一ユニット活動および局所電場電位(LFP)の同時記録をおこなう多領域多点同時記録を実施し、これらの領域の相互作用を特に周波数成分に着目して解析することにより、PDの病態発現への小脳の関与を明らかにするとともに、小脳への脳深部刺激(DBS)によるPDの治療効果を検討することを目的とする。平成30年度は、MPTP投与によって作製したPDサルモデルから、安静時およびボタン押し課題遂行中における大脳皮質、大脳基底核、小脳から神経活動(主にLFP)の多領域多点同時記録を実施した。その結果、PDサルモデルの小脳からベータ波の過活動を検出し、更にcross-frequency coupling解析により、運動遂行時における大脳皮質(特に一次運動野)との間のphase amplitude couplingが大脳基底核よりもむしろ小脳で顕著であることが明らかにした。具体的な結果は以下の2つである。(1)時系列に基づいて、大脳基底核の淡蒼球と一次運動野との間のcross-frequency couplingを解析したところ、健常時やチックモデルではベータ帯域におけるphase amplitude coupling が運動遂行時に強く検出されるのに対して、PDモデルでは同様のcoupling現象がほとんど消失していた。(2)同様に、小脳(主に小脳皮質)と一次運動野との間のcross-frequency couplingを解析したところ、上記(1)の結果と異なり、健常時やチックモデルにおいて運動遂行時にみとめられるベータ帯域でのphase amplitude coupling が、PDモデルにおいても検出された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、PDの病態発現への小脳の関与を検証し、小脳へのDBSによるPDの治療効果を検討することである。平成30年度における上記の研究実績は、PDの病態発現への小脳の関与を示唆しており、これにより、cross-frequency couplingに関する実験データに基づいて神経ネットワークの数理モデルを構築し、発振・同期の機能的意義を明らかにできるだけでなく、DBSによる治療効果の検討をとおして、神経活動への介入による発振制御とその臨床応用に関する新たな知見を得ることができる。すなわち、当初の研究計画にしたがって、前半のPDの病態発現への小脳の関与を明らかにしているため、「おおむね順調に進展している」と考える。
当初の研究計画にしたがって、後半の小脳へのDBSによるPDの治療効果を検討する。具体的には、PDサルモデルにおいて、小脳、特に小脳核へのDBSによるPDの治療効果を検討する。従来PD治療のターゲットであった大脳基底核、特に視床下核へのDBSも併せて実施し、より効果的な治療法について比較、検討する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 10件) 備考 (1件)
Journal of Neuroscience Methods
巻: 311 ページ: 147~155
10.1016/j.jneumeth.2018.10.023
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 3567
10.1038/s41598-019-39535-1
Frontiers in Neuroanatomy
巻: 12 ページ: 3
10.3389/fnana.2018.00003
Neuron
巻: 100 ページ: 1513~1526.e4
10.1016/j.neuron.2018.10.025
Movement Disorders
巻: 34 ページ: 200~209
10.1002/mds.107
Cerebral Cortex
巻: 29 ページ: 561~572
10.1093/cercor/bhx338
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/cercor/bhy103
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/systems_neuroscience/index.html