研究領域 | 非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04946
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
橘 吉寿 神戸大学, 医学研究科, 講師 (50373197)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / 6-OHDA / 異常リズム / 大脳皮質 / 2 光子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病において、大脳基底核内の局所回路における異常リズム形成がパーキンソン病症状発現に深く関与するという報告がこれまでなされている。また、この異常リズムを是正する目的での視床下核もしくは淡蒼球内節(ともに大脳基底核の構成要素である)の高頻度電気刺激が、パーキンソン病症状を改善することが臨床的に知られている。しかしながら、以下の問題が未解明な問題として残っている。 1)パーキンソン病患者ならびにパーキンソン病モデル動物において、大脳基底核で異常発振が見られるものの、大脳皮質―大脳基底核―視床ループの一部である大脳皮質運動野において異常発振が起こるかどうか未だ明らかでない。 2)視床下核の高頻度電気刺激がパーキンソン病症状を改善するが、視床下核の入力源である大脳皮質一次運動野の高頻度電気刺激がパーキンソン病症状を改善するか、また低β帯域の刺激が症状を増悪するか議論が分かれている。 3)パーキンソン病症状の発現前に大脳皮質もしくは大脳基底核の異常リズムが発生するのか、あるいはパーキンソン病症状発現の結果として、大脳皮質もしくは大脳基底核の異常リズムが発生するのか、について未だ統一した見解がない。 これらの問題を解決するため、パーキンソン病モデルマウスにおいて、大脳基底核と密に連絡し最終的な運動出力を担う大脳皮質運動野で基底核と同様の異常リズムが観察されるかどうかを2光子顕微鏡イメージングにて検証する。また、大脳皮質―基底核回路をオプトジェネティクスにて経路選択的に神経操作し、パーキンソン病症状が改善するかあるいは悪化するかについて検証を行う。平成30年度においては、2 光子顕微鏡によるマウス大脳皮質一次運動野のカルシウムイメージングを行い、パーキンソン病症状発現前に比べ、パーキンソン病症状発現後において、大脳皮質一次運動野の同期発火が上昇するという結果を得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度においては、オープンフィールドテストを行動学的指標に、また脳切片における黒質TH染色を組織学的指標にすることで、6-OHDA神経毒によるパーキンソン病モデルマウスの作製法を確立した。これらのパーキンソン病モデルマウスを用い、2 光子顕微鏡によるマウス大脳皮質一次運動野のカルシウムイメージングを行い、パーキンソン病症状発現後、大脳皮質一次運動野の同期発火が上昇するという結果を得ることに成功した。これらの結果から、研究は順調に進んでいると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
2 光子顕微鏡カルシウムイメージングにて、パーキンソン病症状発現と大脳皮質一次運動野の同期現象が深く関与することが明らかとなったが、大脳皮質一次運動野の同期発火がどのように大脳基底核に情報伝達されるかは未だ明らかでない。これまでの先行研究から、大脳皮質から大脳基底核への投射として、視床下核もしくは線条体への投射が知られている。二重遺伝子導入法を用い、大脳皮質-視床下核投射ニューロンもしくは大脳皮質-線条体ニューロンを経路選択的にラベルする技術を既に開発しており、平成31年度においては、大脳皮質-視床下核投射ニューロンと大脳皮質-線条体ニューロンのいずれがパーキンソン病症状発現時に同期発火するかを2 光子顕微鏡カルシウムイメージングにて検証する。また、同期発火が強いと同定された経路を、二重遺伝子導入法と光遺伝学を組み合わせることで、経路選択的に神経活動操作(人工的同期発火を惹起)し、健常マウスにおいて、パーキンソン病症状が発現するかどうかを検証する。さらに、パーキンソン病モデルマウスにおいては、類似の光遺伝学的手法を用いることで、人工的脱同期化を図り、パーキンソン病症状が緩解するかどうかを検証する。
|