パーキンソン病において、大脳基底核内の局所回路における異常リズム形成がパーキンソン病症状発現に深く関与するという報告がこれまでなされている。また、この異常リズムを是正する目的での視床下核もしくは淡蒼球内節(ともに大脳基底核の構成要素である)の高頻度電気刺激が、パーキンソン病症状を改善することが臨床的に知られている。しかしながら、パーキンソン病患者ならびにパーキンソン病モデル動物において、大脳基底核で異常発振が見られるものの、大脳皮質―大脳基底核―視床ループの一部である大脳皮質運動野において異常発振が起こるかどうか未だ明らかでない。これらの問題を解決するため、パーキンソン病モデルマウスにおいて、大脳基底核と密に連絡し最終的な運動出力を担う大脳皮質運動野で基底核と同様の異常リズムが観察されるかどうかを2光子顕微鏡イメージングにて検証した。その結果、パーキンソン病症状発現前に比べ、症状発現後において、大脳皮質一次運動野の同期発火は、大脳皮質浅層(II/III層)で有意に増加し、大脳皮質深層(V層)では有意な増加を示さないことが明らかとなった。また、大脳皮質一次運動野のII/III層は線条体に、V層は視床下核にそれぞれ投射することが解剖学的に確認されたので、ウイルスの二重感染により線条体もしくは視床下核にそれぞれ投射する大脳皮質運動野神経細胞を可視化することに成功し、さらに投射特異的な光遺伝学による人工神経活動操作法も確立したので、今後は、細胞種特異的に大脳皮質神経細胞の異常な同期化を是正することで、パーキンソン病症状が改善するかについて検証したい。
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