本研究では研究代表者が開発した非侵襲的人工神経接続による脊髄刺激によって脊髄歩行中枢の振動を操作し、歩行様式を制御出来るか検証することを目的とした。それを達成する為に下記に示す3つの実験を行った。 1)歩行運動を誘発する刺激部位の特定 健常者12名において、第12胸椎から第5腰椎までの椎骨間をターゲットに非侵襲的磁気刺激を連発で与え、下肢の歩行運動が誘導出来るエリアとホッピング運動が誘導出来るエリアをそれぞれ同定することが出来た。脊髄歩行中枢マッピングによって歩行運動を誘導することできる刺激エリアが第1腰椎から第3腰椎の付近に存在することが明らかとなった。 2)脊髄歩行中枢のオシレーションの制御 研究代表者が開発した人工神経接続システムを用いて被験者自身が脊髄刺激のリズムを制御出来る閉回路システムを構築した。それを用いることにより、被験者自身が脊髄刺激リズムを随意的制御し、誘発歩行運動のリズムとステップ長の随意制御が出来た。 3)歩行機能障害者への脊髄刺激介入 胸髄レベルでの脊髄損傷患者で人工神経接続による介入研究を6か月間継続したところ、2人とも人工神経接続ありの時には、歩行の開始、停止、歩容の変化が可能になり、随意歩行機能を再建出来た。また、人工神経接続の繰り返しにより、人工神経接続から離脱しても、随意歩行が出来るようにまで回復した。 以上の3つの実験により、研究代表者が開発した非侵襲的人工神経接続は脊髄刺激によって脊髄歩行中枢の振動を操作し、歩行様式を制御でき、それを脊髄損傷患者に適応することによって、随意歩行機能を再建・回復させることを示すことが出来た。
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