安静時fMRIを用いたヒト脳ネットワークの解明が進んでいるが,安静時fMRIで描出される安静時脳ネットワークの時間変動の特性にはまだ不明な点も多い.その理由の一つは,fMRIのみではネットワークの挙動の時間変動(ダイナミクス)の情報が十分に得られないからである.そこで,時間・空間解像度が相補的である128 チャンネル脳波並びに課題及び安静時fMRI同時計測を統合し,ヒト脳ネットワークの動的変動を高精度に測定する技術の開発を目指した.39名の健常参加者から計測を行った.安静時は開眼固視条件,課題はフランカー課題を用いた.fMRIデータはSPM並びにFSLでグループICAによるノイズ削減を含めた前処理を行った.脳波データから,まずMRI撮像に伴う機械的ノイズ高磁場環境で増強する生理的ノイズの除去を行い,残存するアーチファクトはさらにICA及びartifact subspace reconstructionにて低減させた.アーチファクト除去後の脳波の短時間フーリエ解析により,周波数帯ごとのスペクトル密度を1秒ごとに全電極から計算した.ここでは左右の背側注意ネットワーク(DAN)の挙動に注目し,DANにおけるfMRI信号の時間変動と,アルファ(8-13 Hz)とベータ(13-30 Hz)帯域の脳波成分の時間変動の間に関係があるかを検討した.左右のDANの信号と後頭頭頂領域の電極のスペクトル密度に負の相関があることを発見した.左のDANにおける相関は課題時と安静時で差があったが,右DANでは大きな差は見られなかった.この研究結果は,後頭頭頂領域のアルファとベータ帯域の脳波成分はDANの活動に連れ立って変動する成分があることを明確にした.
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