研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04970
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
篠原 正浩 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究室長 (60345733)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨細胞 / 骨粗鬆症 / PI3K / RANKL |
研究実績の概要 |
本研究では宇宙マウス実験で得られている骨組織解析データや遺伝子発現データ、および骨細胞特異的やRANKL発現細胞遺伝子改変マウスを活用し、微小重力におけるRANKLの発現亢進のメカニズムを追究、分子メカニズムに立脚した宇宙空間における骨量低下抑制法の開発のための分子基盤を構築することを目的としている。今年度は、微小重力環境のような力学的非荷重環境下でのRANKL発現亢進を伴う骨破壊に関して、in vitro骨細胞培養系および骨細胞特異的ノックアウトマウスを用いた解析により下記項目について明らかにした。①骨細胞培養細胞株MLO-Y4にfluid shear stress(FSS)を負荷させる際にPI3K阻害剤を添加したところ、PI3Kの下流分子の活性化が抑制されることが判明し、FSSがPI3Kを活性化させることを明らかにした。②骨細胞培養細胞株MLO-Y4に対するFSSはRANKLの発現を低下させることを確認し、PI3K阻害剤のFSSによるRANKL発現への影響について明らかにした。③骨細胞特異的ノックアウトマウスとCAG-CAT-EGFPマウスを交配させ、骨細胞特異的ノックアウトマウスの骨細胞をEGFPでラベル可能なマウスを樹立した。④骨細胞の網羅的遺伝子発現データより、FSS負荷によりPI3Kを活性化させる分子と想定される分子の抽出を行った。⑤上記抽出分子の発現を抑制する骨細胞株MLO-Y4をshRNAを用いて樹立した。 今年度の研究成果は、当初掲げた目標のうち1)骨細胞に対する物理的力刺激がPI3K経路を活性化することを明らかにする、2)RANKLの発現制御に骨細胞のPI3K経路が重要であることを実証する、という2項目に該当する成果であった。この点に追加し、遺伝子改変マウスに対して適用する不動化モデルや運動モデル実験の条件を確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の達成目標として、1)骨細胞に対する物理的力刺激がPI3K経路を活性化することを明らかにする、2)RANKLの発現制御に骨細胞のPI3K経路が重要であることを実証する、ことの2点を掲げ、達成できたものと考えられる。また、来年度には3)骨細胞における物理的力刺激によるPI3Kを活性化およびRANKL発現制御メカニズムを解明することを予定しているが、今年度中にPI3Kの上流分子の同定に必要なshRNA発現細胞を樹立することもできた。したがって、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は当初の研究計画に沿った実験を実施する。特にFSSがPI3Kを活性化するメカニズムに焦点を当てた解析を行う。また、骨細胞特異的ノックアウトマウスとCAG-CAT-EGFPマウスを交配することにより、骨細胞特異的ノックアウトマウスにおける骨細胞をEGFPで標識することが可能な遺伝子改変マウスの作製に成功したため、マウス骨組織より初代骨細胞の単離および培養が可能となった。したがって、この初代培養細胞を活用した研究を展開し、さらなるメカニズムの追求を図る。
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