公募研究
生体間葉系幹細胞は、骨組織において骨芽細胞や軟骨細胞の供給源であり、さらに、ニッチ細胞として血液細胞の機能調節にも関与することが報告されている。宇宙飛行士や長期臥床者には骨量の急激な減少とともに、免疫機能の低下も観察される。近年、間葉系幹細胞の幹細胞特性と重力環境変動の関連性が報告されているが、微小重力環境下で発症する機能異常における間葉系幹細胞の役割は未解明である。私たちはこれまでに、MAPKの一つであるExtracellular signal-regulated kinase 5(Erk5)が、間葉系幹細胞の幹細胞性維持機構に必須であることを見出した。本研究では間葉系幹細胞に発現するErk5の骨環境維持機構における役割を探索し、以下の点を見出した。①:模擬微小重力モデルである尾部懸垂を負荷したマウスの骨組織において、間葉系幹細胞のErk5の活性化(リン酸化)低下が認められた。②:間葉系幹細胞細胞特異的Erk5欠損マウスでは、骨環境変化(骨髄内の骨量の著明な上昇とB細胞の上昇)が認められた。③:転写制御因子Sox9欠損により、間葉系幹細胞特異的Erk5不活性化マウスで観察された骨環境変化が有意に抑制された。④:E3ユビキチンリガーゼSmurf2活性化により、間葉系幹細胞特異的Erk5不活性化マウスで観察された骨環境変化が有意に抑制された。以上の4点から、生体骨髄内の間葉系幹細胞のErk5は、微小重力に応答し、Smurf2とSox9を介して骨環境の恒常性維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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巻: 10 ページ: 00684
10.3389/fphar.2019.00684
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巻: 12 ページ: eaaw3921
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doi: 10.1210/en.2019-00090