公募研究
概日リズムは、地球の自転に伴う24時間周期の昼夜(明暗)サイクルへの適応システムである。しかし、ひとたび地球の外に飛び出せば、そこには必ずしも24時間周期の明暗サイクルは存在しない。したがって、概日リズムの周期を自在に操作できたら、地球外で生活する上で非常に有用な技術になる。概日リズム制御中枢・視交叉上核(SCN)は、多種・多数の時計ニューロン集団から成る神経ネットワークである。本研究では、中枢概日時計・SCN神経ネットワークの概日周期決定のメカニズムを明らかにし、これを基に概日周期を操作する方法の開発を目指す。これまでの研究で、AVPニューロンのみで細胞時計の周期を人為的に長くする(casein kinase 1d: CK1dを特異的にノックアウトする)と、SCNが発振する概日行動リズムの周期も平均約50分延長することから、AVPニューロンが概日周期を決定するペースメーカー細胞の少なくとも一部として機能することを明らかにしていた。本年度は、概日周期決定におけるAVPニューロンの寄与度を明らかにするために、CK1dをSCN全体でノックアウトしたマウスを作成し、概日行動リズムの周期を測定したところ、コントロールマウスと比較して平均約60分延長していた。一方、VIPニューロンのみで同様の遺伝子操作を行っても、行動リズム周期に変化は観察されなかった。AVPニューロンのみで細胞時計周期を長くした場合と、SCN全体で細胞時計周期を長くした場合で、行動リズムに反映される概日リズム周期がほとんど変わらないことから、少なくともin vivoにおいては、AVPニューロンが持つ細胞時計の周期が、SCN神経ネットワーク全体が発振して行動リズムを制御する概日周期の主要な決定要因であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ研究計画の通りに、研究が進んでいる。
本年度概日行動リズムを解析した各マウス系統について、SCNスライスにおける時計遺伝子発現リズムを、レポーターマウスを利用した発光イメージング法により解析し、SCN神経ネットワークにどのような異常が現れているか、検討する。また、ファイバーフォトメトリーを用いてSCN神経活動の概日周期を生体内で測定する。光遺伝学や化学遺伝学を用いた概日リズム周期操作の実験も継続する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
eNeuro
巻: 6 ページ: 0415-18.2019
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