研究実績の概要 |
重力は地球上の全ての生物に影響しており、3次元で構成された生体中で細胞と細胞外基質をつなぎとめる細胞接着装置は重力環境下で生物が進化する上で無くてはならない構造体と考えられる。重力の大きさが約100万分の1となる国際宇宙ステーションは微小重力環境と呼ばれ、人間が生活すると骨量が減少する。申請者らは遺伝子改変メダカを用いた宇宙実験を行い、破骨細胞が活性化することを明らかにした(Chatani et al, Sci Rep 2015)。このことは、破骨細胞は重力に依存した活性化調節機構を有していることを示唆するが、詳細なメカニズムは不明である。破骨細胞は骨を溶かすために骨基質と強く接着する必要があり、インテグリンを含んだ細胞接着構造を持っている。この構造は細胞が細胞外環境を繊細に感受できる複合体を構築しており、きわめてよくコントロールされたInside-Out Signalingが可能である。破骨細胞の重力感知は細胞接着装置を介して行われると仮定し、その機構を明らかにする。 前回の公募研究の成果として、国際宇宙ステーションでの蛍光タンパク質発現上昇と、微小重力環境下での骨関連遺伝子が急激に発現上昇することを明らかにした(Chatani et al, Sci Rep 2016)。本研究では、細胞の培養実験において細胞の接着面が重力方向に対して傾斜する角度で培養する実験を行った。骨に関連する様々な細胞種で検討したところ、破骨細胞の培養において重力方向への移動がみられた。この現象を正確に再現するために傾きの条件など、培養条件を検討した。
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