研究実績の概要 |
生物において恒常性の維持は重要であるが、環境の変化からその破綻がみられる場合がある。その一つとして宇宙環境があり、宇宙飛行士が宇宙から帰還すると骨量の低下がみられる。このことから骨代謝の制御には重力が関与すると考えられるが、その機構は未だ明らかになっていない。本研究ではメダカに遺伝子改変を行い、骨代謝における重力の影響について解析と検討を行った。 メダカの宇宙環境利用実験で得られたRNAseqデータ解析からグルココルチコイドのシグナルに着目し、メダカの骨代謝におけるグルココルチコイドの役割について調べた。グルココルチコイド受容体ノックアウトマウスは胎生致死となるが、今回メダカでグルココルチコイド受容体遺伝子の1つを欠損した動物を作製したところ、生存することがわかった。このメダカのヒレの一部を骨折させて骨修復能を調べた結果、骨折部位に集まる破骨細胞と骨芽細胞が増加したことから、GR2が両細胞の動態を制御するという新たな知見を得た。(Azetsu et al, 2019) メカノセンシングに関与すると考えられている髄鞘について解析を行うため、髄鞘が可視化して見えるmpz (myelin protein zero, p0)-EGFPトランスジェニックメダカを作製した。骨修復能を調べた結果、mpz陽性細胞がnerve上に集合してくる様子が観察された。さらにラパマイシン投与により、骨修復時における骨芽細胞とmpz陽性細胞のリクルートが抑制されることがわかった。(Dodo et al, 2020) 重力作用による硬組織形成への影響を調べるため、過剰な重力をメダカに与える実験系の構築を行った。約5倍の重力環境下でメダカを飼育した結果、脊椎骨が背側へ湾曲することがわかった。さらに、耳石形成にも異常がみられた。(Chatani et al, 2019)
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