公募研究
1.「情動に関係する学習行動を司る神経回路を同定した」モデル脊椎動物ゼブラフィッシュの成魚を用いて、恐怖条件付け学習のアッセイシステムを開発した。脳の様々な神経回路にGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを作製し、Gal4-UAS法によりゼブラフィッシュの特定の脳神経回路にボツリヌス神経毒素遺伝子を発現させ、神経回路機能阻害実験を行った。その結果、終脳の背側内部領域に存在する神経細胞群が、恐怖条件付け学習に必須であることを明らかにした。この神経回路は、哺乳動物においては、情動に関する学習や記憶に重要な働きをしている扁桃体に相当するものであると考えることができる。小型魚類を用いて宇宙環境における情動のコントロール研究等の基盤を築くことができたと考える。2.「宇宙環境でゼブラフィッシュ脳において発現が増減する遺伝子の解析」計画研究瀬原班と共同で、宇宙滞在ゼブラフィッシュと地上滞在コントロールゼブラフィッシュの脳からRNAを抽出し、RNA-seq解析に行い、トランスクリプトームの比較を行った。その結果、宇宙滞在2日目と5週目の時点で共通して発現上昇している遺伝子Xを同定した。このX遺伝子は微小重力環境で発現が上昇する遺伝子であると考えられる。現在、X遺伝子の発現をコントロールする制御領域の研究、X遺伝子機能解析のためCRISPR/Cas9法による機能破壊実験を進めている。3.「トランスジェニックフィッシュにおいて遺伝子破壊をするシステムの開発」トランスジェニックフィッシュにおいて、CRISPR/Cas9法によって効率よく遺伝子破壊をするために、gRNAをtRNAをスペーサーに用いて発現させると、細胞内でtRNAが切断され、機能的なgRNAが作られることを示した。
2: おおむね順調に進展している
1.「情動に関係する学習行動を司る神経回路を同定した」に関しては、2018年に論文を出版することができたから。2.「宇宙環境でゼブラフィッシュ脳において発現が増減する遺伝子の解析」に関しては、微小重力環境において発現が変動する遺伝子Xを発見することができたから。
1.遺伝子Xの発現可視化のためのトランスジェニックフィッシュの作製およびCRISPR/Cas9法による機能破壊実験X遺伝子内の塩基配列をターゲットとしたgRNAを設計し、Cas9酵素mRNA、ドナーとなるGal4遺伝子をもつDNAと共に、ゼブラフィッシュ受精卵へマイクロインジェクションする。マイクロインジェクションした胚を成魚にまで育て、かけあわせによりX遺伝子座にGal4遺伝子がノックインされたトランスジェニックフィッシュ個体を得る。このトランスジェニックフィッシュをUAS:GFPフィッシュとかけあわせることにより、X遺伝子の発現パターンを可視化する。どのような条件下でX遺伝子の発現が誘導されるか?を明らかにする。同時に、このトランスジェニックフィッシュ系統ではX遺伝子が破壊される。遺伝子破壊変異のホモ2倍体を作製し、表現型の解析を行う。2.ゼブラフィッシュを用いた食欲、情動、ストレスに関する脳神経回路の研究ゼブラフィッシュ稚魚を様々なストレス下におき、どのような神経回路が活性化され、ストレスが脳内でどのように情報処理されるか? を明らかにする。具体的には、脳神経回路特異的Gal4発現トランスジェニックフィッシュとをリアルタイムカルシウムイメージング法を組み合わせることにより、様々なストレスに反応する脳神経回路の探索を行う。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Scientific reports
巻: 8 ページ: 13386
10.1038/s41598-018-31476-5
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10.1016/j.celrep.2018.07.024
https://ztrap.nig.ac.jp/ztrap/