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2018 年度 実績報告書

小型魚類を用いた宇宙環境が脳機能・脳構造に与える影響の研究

公募研究

研究領域宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解
研究課題/領域番号 18H04988
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

川上 浩一  国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (70195048)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワードゼブラフィッシュ / 微小重力環境 / 遺伝子発現 / 脳機能 / 学習、記憶
研究実績の概要

1.「情動に関係する学習行動を司る神経回路を同定した」
モデル脊椎動物ゼブラフィッシュの成魚を用いて、恐怖条件付け学習のアッセイシステムを開発した。脳の様々な神経回路にGal4を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを作製し、Gal4-UAS法によりゼブラフィッシュの特定の脳神経回路にボツリヌス神経毒素遺伝子を発現させ、神経回路機能阻害実験を行った。その結果、終脳の背側内部領域に存在する神経細胞群が、恐怖条件付け学習に必須であることを明らかにした。この神経回路は、哺乳動物においては、情動に関する学習や記憶に重要な働きをしている扁桃体に相当するものであると考えることができる。小型魚類を用いて宇宙環境における情動のコントロール研究等の基盤を築くことができたと考える。
2.「宇宙環境でゼブラフィッシュ脳において発現が増減する遺伝子の解析」
計画研究瀬原班と共同で、宇宙滞在ゼブラフィッシュと地上滞在コントロールゼブラフィッシュの脳からRNAを抽出し、RNA-seq解析に行い、トランスクリプトームの比較を行った。その結果、宇宙滞在2日目と5週目の時点で共通して発現上昇している遺伝子Xを同定した。このX遺伝子は微小重力環境で発現が上昇する遺伝子であると考えられる。現在、X遺伝子の発現をコントロールする制御領域の研究、X遺伝子機能解析のためCRISPR/Cas9法による機能破壊実験を進めている。
3.「トランスジェニックフィッシュにおいて遺伝子破壊をするシステムの開発」
トランスジェニックフィッシュにおいて、CRISPR/Cas9法によって効率よく遺伝子破壊をするために、gRNAをtRNAをスペーサーに用いて発現させると、細胞内でtRNAが切断され、機能的なgRNAが作られることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.「情動に関係する学習行動を司る神経回路を同定した」に関しては、2018年に論文を出版することができたから。
2.「宇宙環境でゼブラフィッシュ脳において発現が増減する遺伝子の解析」に関しては、微小重力環境において発現が変動する遺伝子Xを発見することができたから。

今後の研究の推進方策

1.遺伝子Xの発現可視化のためのトランスジェニックフィッシュの作製およびCRISPR/Cas9法による機能破壊実験
X遺伝子内の塩基配列をターゲットとしたgRNAを設計し、Cas9酵素mRNA、ドナーとなるGal4遺伝子をもつDNAと共に、ゼブラフィッシュ受精卵へマイクロインジェクションする。マイクロインジェクションした胚を成魚にまで育て、かけあわせによりX遺伝子座にGal4遺伝子がノックインされたトランスジェニックフィッシュ個体を得る。このトランスジェニックフィッシュをUAS:GFPフィッシュとかけあわせることにより、X遺伝子の発現パターンを可視化する。どのような条件下でX遺伝子の発現が誘導されるか?を明らかにする。同時に、このトランスジェニックフィッシュ系統ではX遺伝子が破壊される。遺伝子破壊変異のホモ2倍体を作製し、表現型の解析を行う。
2.ゼブラフィッシュを用いた食欲、情動、ストレスに関する脳神経回路の研究
ゼブラフィッシュ稚魚を様々なストレス下におき、どのような神経回路が活性化され、ストレスが脳内でどのように情報処理されるか? を明らかにする。具体的には、脳神経回路特異的Gal4発現トランスジェニックフィッシュとをリアルタイムカルシウムイメージング法を組み合わせることにより、様々なストレスに反応する脳神経回路の探索を行う。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Kavli Institute for Systems Neuroscience(ノルウェー)

    • 国名
      ノルウェー
    • 外国機関名
      Kavli Institute for Systems Neuroscience
  • [雑誌論文] A tRNA-based multiplex sgRNA expression system in zebrafish and its application to generation of transgenic albino fish.2018

    • 著者名/発表者名
      Shiraki, T., and Kawakami, K.
    • 雑誌名

      Scientific reports

      巻: 8 ページ: 13386

    • DOI

      10.1038/s41598-018-31476-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of a neuronal population in the telencephalon essential for fear conditioning in zebrafish.2018

    • 著者名/発表者名
      Lal, P., Tanabe, H., Suster, M.L., Ailan, D., Kotani, Y., Muto, A., Itoh, M., Iwasaki, M., Wada, H., Yaksi, E., and Kawakami, K.
    • 雑誌名

      BMC Biology

      巻: 16 ページ: 45

    • DOI

      10.1186/s12915-018-0502-y

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Protocadherin-mediated cell repulsion controls the central topography and efferent projections of the abducens nucleus.2018

    • 著者名/発表者名
      Asakawa, K, and Kawakami, K.
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 24 ページ: 1562-1572

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2018.07.024

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ゼブラフィッシュにおけるトランスポゾンを用いたゲノムワイド遺伝子トラップスクリーンと脳機能研究への応用2018

    • 著者名/発表者名
      川上浩一
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] ゼブラフィッシュ:基礎生物学から薬学・医学分野への応用まで2018

    • 著者名/発表者名
      川上浩一
    • 学会等名
      Chem-Bio Informatics Society (CBI)学会2018年大会
    • 招待講演
  • [学会発表] ゼブラフィッシュの遺伝学2018

    • 著者名/発表者名
      川上浩一
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第63回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] The Tol2 transposon-mediated genetic methods in zebrafish and their applications to the study of functional neuronal circuits.2018

    • 著者名/発表者名
      Kawakami, K.
    • 学会等名
      NIG International Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The Tol2 Transposon Technology and Its Application to Genetic Studies in Zebrafish.2018

    • 著者名/発表者名
      Kawakami, K.
    • 学会等名
      International Joint Conference on Genetics & Medicine (IJCGM)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] How are aversive stimuli processed in the brain?2018

    • 著者名/発表者名
      Kawakami, K.
    • 学会等名
      5th International Conference on “Imaging Structure and Function in the Zebrafish Brain”
    • 国際学会
  • [備考] zebrafish gene trap and enhancer trap database

    • URL

      https://ztrap.nig.ac.jp/ztrap/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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