擬似微小重力環境および擬似宇宙放射線曝露実験における“direct visualization”を実現するための技術開発を進めた。 A:3Dクリノスタットに設置可能な蛍光顕微鏡システムの開発を2つのアプローチにより進めた。L-eye ZeroG-Palm は蛍光1色取得版について完成させた(蛍光2色版は検証中)。吉田モデルは、シーケンシャル撮影プログラムを構築しフィルター切替を自動化することで蛍光2色+透過像の経時的撮影を達成した。複数の細胞現象の同時可視化が可能となる。今後は小型化を目指し、JAXA小型衛星ミッションなどの参画研究に対して本システムの運用を提案する。 B:疑似微小重力により発現量が大きく変化する遺伝子の抽出を目指し、まずRPE-1細胞を用いて実験を行った。10個の候補遺伝子を抽出しており、今後重力と細胞環境との関連を解析し、宇宙規模での基本的生命現象の理解の一端となるよう貢献をめざす。 C:DNA傷害による細胞周期撹乱を可視化する実験系(Molecular Cell. 2017)を、擬似宇宙放射線曝露実験に適用し、その影響を“direct visualization”する実験を進めた。高橋昭久先生(群馬大学:X線、炭素線)、小林純也先生(京都大学:γ線)、阿部知子先生(理研:炭素線、アルゴン線)と共同研究を行い、データ解析が進行中である。 D:これまでに種々の細胞に様々な因子で細胞恒常性攪乱を誘発し、細胞のふるまいを可視化する実験を行ってきた。その過程で、特異的な条件においてのみ細胞がendoreplicationを選択する場面に多々遭遇し、ストレス応答の一指標と仮定した。抗がん剤処理や放射線障害、疑似微小重力によっても、endoreplicationを起こす条件の探索を行った。並行して次世代シーケンシング解析を行っており、今後新奇ストレスマーカーの抽出を目指す。
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