研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H04994
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
高野 晴子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (40532891)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小重力 / 骨 / 負荷 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
宇宙では脛骨に代表される体重支持骨において、特に骨量減少が重篤となることから、荷重負荷を起点とする骨代謝機構が存在すると考えられるが、その機構は不明である。私たちは、透明化技術を用いて全身性に遺伝子発現をモニターする手法を確立しており、体重支持骨にて特に発現の高い遺伝子Osteocrin(OSTN)を見出した。OSTNは骨芽細胞が分泌するタンパク質で、骨成長期において発現が高く、骨膜に濃縮している。 領域で使用されていた尾部懸垂モデルを用いて、OSTNが実際に荷重負荷で発現変動することを明確にした。OSTNは尾部懸垂によって顕著に抑制され、また、再負荷によって発現が回復することを明らかにした。さらに、このOSTN発現細胞を骨膜上で詳細に調べるために、骨膜イメージング法を確立し詳細に検討した。OSTN発現細胞は骨上に存在する骨膜に多く認められ、さらに一部の血管にも発現を認めた。 一方、OSTNはナトリウム利尿ペプチド(NP)のクリアランスレセプターである(NPR3)に特異的に結合することから、この細胞でのNPの分解を抑制していると考えている。そこで、シグナル機構を詳細に明らかにするために、未分化な細胞を多く含む骨膜細胞を採取して、OSTNによるCNPの分解抑制が骨芽細胞への分化を促進することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は1)OSTNの標的細胞とシグナル解析、2)OSTNの発現細胞と上流シグナル解析、3)微小重力環境依存的な骨量減少に対するOSTNの有効性、に分かれている。本年度はすでに、1)を完了し、2)についても荷重負荷実験を完了しているため、順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はOSTNの治療的応用と新たに疑問となった箇所について解析する予定である。 1)尾部懸垂によるOSTNの発現量低下が、骨膜骨芽細胞の減少に起因する可能性を検討する。尾部懸垂前後の骨膜細胞を採取し、Osterix陽性の骨芽細胞量をFACS等により明らかにする。また、OSTN陽性細胞の割合とOSTNシグナル強度を明らかにし、この細胞の減少によりOSTNの発現量低下が説明されるかを明らかにする。また、上記の骨膜の組織的変化の過程を骨膜イメージングにより観察する。 2)OSTNの発現が進展刺激そのもので発現誘導される可能性を検討するため、骨膜細胞にストレッチ刺激を行い、OSTNの発現量を解析する。 3)In vivoにおいてOSTNの効果を明らかにするためにOSTN-Tgと野生型マウスに、懸垂モデルを施して、マイクロCTや骨形態計測により骨量減少の抑制効果を検証する。また、OSTNによる骨量減少の解除が、骨前駆細胞の供給を介しているかを明らかにするために、尾部懸垂後のOsterix陽性細胞をFACSや組織学的手法を用いて検討する。
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