研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H05000
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三浦 貴大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (80637075)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 盲ろう / 視覚・聴覚・触覚での質感 / 提示インタフェース |
研究実績の概要 |
2018年度は当初計画した4項目に加え,5)の5項目に取り組んだ. 1) 全盲者が聴覚的に感じる空間や音声の質感提示指針・提示システムの開発:視覚障害者における空間に対する質感(特に障害物知覚)に関する利用状況について調査を行った.また,この質感評価を行うための聴覚提示システムを開発した. 2) 全盲者が触覚的に感じるテクスチャの質感提示指針・提示システムの開発:全盲者での質感評価を行うための触感ディスプレイモジュールを開発した.本モジュールは,周波数・振幅・波形などの制御が可能な32chの振動子がマトリクス配置されたものである.このモジュールを用いた質感評価用ディスプレイの他,触感提示が可能なゲームコントローラを開発した.このコントローラを用いたアクションゲームを3ヶ月間,博物館で展示し,ゲームの行いやすさを評価した.画面が真っ暗な場合,触覚提示によって画面中の情報が分かるとの意見があった. 3) 全盲者における聴覚・触覚におけるマルチモーダル知覚に関する調査:2019年度に検討予定である. 4) 盲ろう者が触覚的に感じるテクスチャの質感提示指針・提示システムの開発:2019年度に検討予定である. 5) 弱視者における視覚的な臨場感印象:ヘッドマウントディスプレイ(HMD)での全天球映像コンテンツ提示時における弱視者における臨場感の発生要件を実験的に調べた.弱視者6名には,HMDでの映像提示中に360度見回してもらい,Presence Questionnaire (PQ)で臨場感を評価してもらった.この結果,フレームレートや解像度の向上と共に没入感が上がる傾向が確認できた一方,VR酔いが発生する者もいた.また彼らでは,解像度が720pの条件の方が1080pよりも没入感が高まった.遅延の没入感への影響は全般的に大きくなかったが,VR酔いが発生した音では,遅延によって没入感が低下した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画段階では,1)聴覚的に感じる空間印象は2018年度に終わらせる予定だったが,システム開発の遅延に伴い,実験の実施が遅れている.また,2)テクスチャの質感提示指針においても,同様に触覚ディスプレイモジュールの開発の遅れのために,実験実施が遅れた.一方で,計画段階に想定しなかった5)の実施が出来た他,2)においても実利用上の評価が先に進められた.全体的には,計画段階での企画内容の進展は遅れているが,当初は想定しなかった成果は生み出せている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初想定した4課題に加えて,5つ目の課題を加えることとする.具体的な実施内容は以下を想定している: 1) 全盲者が聴覚的に感じる空間や音声の質感提示指針・提示システムの開発:特に聴覚的な空間印象について評価を行う. 2) 全盲者が触覚的に感じるテクスチャの質感提示指針・提示システムの開発:開発した触感ディスプレイを用いて,実験的検討を行う.また,既に博物館で展示した触感提示によるゲームの行いやすさについて,分析を継続する. 3) 全盲者における聴覚・触覚におけるマルチモーダル知覚に関する調査:1), 2)の実験と合わせて検討を行う. 4) 盲ろう者が触覚的に感じるテクスチャの質感提示指針・提示システムの開発:全盲者での調査結果を踏まえて,実験を行う. 5) 弱視者における視覚的な臨場感印象:晴眼者での追加実験を実施し,見え方(視覚経験)とVR空間での臨場感印象との関係について調査を継続的に行う.
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