研究実績の概要 |
本研究の目的は,食品へのプロジェクションマッピングによってその視覚的質感を変化させることで,その食品を摂取したときに生じる多感覚知覚(食感,温度,味質,量,鮮度等)やおいしさ等の認知,食行動を制御することが可能な食品向けの新規質感変調投影技術を確立することである.視覚的質感の変化が多感覚知覚に加えて行動や認知をも変化させるという現象を,最も多感覚を活用する食行動に適用し,味(味覚)・香り(嗅覚)・食感(触覚)等のより広範な知覚に影響を与える影響をモデル化することを狙う.そのために,食品の視覚的質感の変化が食感,温度,味質,量,鮮度等の推定に与える影響と,摂食時に生じる多感覚知覚やおいしさ等の認知,さらには食行動にまで与える影響を体系的に明らかにする.その上で,食知覚・食行動を制御して提示可能な食品向けの新規質感変調投影技術・質感設計手法を明らかにする. 平成30年度は,変幻灯(T. Kawabe et al., 2016)の知見を活かし,ぐつぐつとした煮える動きの運動情報を食品に投影した際の味覚変化について調査した.実験ではカレーを評価対象として採用し,試食前後における味覚や温度等に対する評価を収集した.提示条件は,ぐつぐつとした動きのある映像と動きのない映像(発色の統一を図るための一様なテクスチャ)を投影した2種の映像条件,カレーの温度2条件の組み合わせである.実験結果より,試食前後とも動きのある映像の投影で食欲の評価が増すことが示された.一方,温度や香り,おいしさ等の評価では,試食前には動きのある映像の提示で向上することが示されたものの,試食後には差異が認められなかった.動きの提示で生じた期待が実際の味覚刺激より大きくなり,期待効果における対比がおき評価が下がったことが理由として考えられる.
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