研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H05007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 一郎 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (60181351)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 質感 / テクスチャー / V2野 / ストライプ構造 / 遺伝子改変技術 / 2光子イメージング / 内因性信号光学計測 / 霊長類 |
研究実績の概要 |
物体表面が持つテクスチャーは、質感知覚や物体認識にとって重要である。霊長類大脳皮質において、テクスチャー情報の処理 は腹側経路で行われ、一次視覚野(V1)から中次視覚野(V2, V4)に向けて段階的に進展する。これらの領野はそれぞれ、視覚 応答特性、線維連絡などが異なるサブ領野構造(V1野のブロブ・ブロブ間隙、V2野の3種のストライプ、V4野の色・方位ドメイン)から成るが、そのどこでテクスチャー情報が処理されているかは不明である。その解明は、テクスチャー情報抽出の神経回 路メカニズムや他視覚属性との相互作用を理解する上で大きな手がかりを与える。本研究では、テクスチャー情報を伝える機能 構造を特定し、さらに個々の神経細胞がテクスチャー情報と他の視覚属性をどう統合・分離しているかを明らかにする。以上よ り、テクスチャー情報を計算する腹側経路内部の機能回路および他視覚属性情報との統合・分離過程を解明することを最終目的とする。 この研究目標の達成には、広域にわたるイメージングによりサブ領野構造の同定ののちに、それぞれのサブ領野に存在する個々の神経細胞の活動を2光子イメージング法により可視化しなくてはならない。本年度は、サブ領野同定のための内因性信号の長期安定計測と、ウイルスベクターを用いた2光子カルシウムイメージング技術の開発と実現を達成した。GCaMP6sシステムを用いたカルシウム感受性色素の導入を行い、同定されたサブ領野における神経細胞の活動を計測を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内因性信号光学計測による大脳皮質のマクロ機能構築の可視化と、2光子カルシウムイメージングによる単一細胞レベルでの神経活動計測を両立させるためには、(1)広域の脳表面を露出し内因性信号計測を可能にする技術と、(2)ウイルスベクターを用いたカルシウム感受性色素による神経細胞の標識の二つの技術を開発、実現する必要があったが、その両者の目標を今年度達成した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、実現に成功した、内因性信号光学計測と2光子イメージングの両者を同時適用して、V2野におけるテクスチャー情報処理過程を解明する。内因性信号光学計測によりV2野の3つの機能的区画(「太い縞」thick stripes、「細い縞」thin stripes, 「淡い縞」pale stripes)を同定し、それぞれの区画における神経細胞群のテクスチャー刺激に対する反応を調べる。また、他の視覚特徴(色、両眼視差)に対する反応も調査し、個々の細胞が複数のモダリティーをどう統合しているかを明らかにする。
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