公募研究
顔には、我々の社会生活に重要な情報が含まれている。我々が顔を見るとき、個体や表情を認識できるが、それは、眼、鼻、口などの形やそれら相互の距離など造作の形態情報に基づいている。さらに、年齢や体調などを推しはかることもできるが、肌や髪、眼などの質感情報に基づくと考えられる。このように、顔の質感は、個体の状態を見分けるために重要な情報を与える。本研究は、この顔の質感をコードする情報処理と、その情報処理の質感認知における役割を明らかにすることを目的とする。TE野では、ヒトかサルかの分類情報と個体・表情の情報が時間的に異なるタイミングでコードされることが明らかになっている。そこで、情報の時間的コーディングという観点から研究を進めている。実験動物のTE野前部からニューロン活動を記録して、顔に対する応答を調べ、質感情報の時間的コードを、個体や表情の情報の時間的コードと比較する。質感の異なる顔画像セットとして、光沢を強調または減弱させた顔画像、および、スタイル変換の手法で顔の質感を織物の質感へと変化させた画像セットを用い、サルの側頭葉に多電極アレイを埋め込み、TE野から複数のニューロン活動を同時記録した。その結果、光沢増強、減弱、あるいは、スタイル変換が、ニューロンの顔画像に対する応答の強さに影響を与えていた。光沢の違いは時間的に画像呈示後の遅いタイミングで現れ、顔表情の情報処理を乱さない一方、スタイル変換の影響は時間的に早くからみられ、表情の情報処理を弱めていた。光沢の違いとスタイル変換は、異なるメカニズムで顔の情報処理に影響を与えることが示唆される。質感のコードを顔画像と物体画像で比較することを目的として、顔以外の物体や物体の質感変化に対するニューロン活動も調べた。
2: おおむね順調に進展している
側頭葉の情報処理について、複数のニューロン活動を同時記録した実験においても、単一ニューロン活動の実験と類似した結果であることを確認できたため。
物体画像を用いた神経活動データの解析を進め、顔画像の情報処理に関わるニューロンが局在する脳部位を特定する。その脳部位内外で情報処理を比較し、顔画像あるいは物体画像における質感のコードを明らかにする。
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