公募研究
脳梗塞では、発症1~3時間でアストロサイトの細胞死と、これに伴う炎症細胞の浸潤を認め、発症6時間を越えると神経細胞の死が始まる。すなわち、脳虚血の開始時の病態は可逆的(未病)であるが、アストロサイトの細胞死と炎症反応が継続すると、神経細胞死が誘導され、神経障害の不可逆化が成立する。これらのイベントカスケードの中で、死細胞に由来するDAMPsが誘導する炎症反応が、カスケードを再増幅させ、神経障害の不可逆化を一層増強していることが推察される。しかし、この神経障害に至る一連の分子機構は充分に解明されていない。本研究において、応募者らは、アポトーシス細胞の細胞膜上に表出するphosphatidylserein (PS) の受容体である抑制性免疫受容体CD300aが、マクロファージによる死細胞の貪食を抑制することを見出した。これは、CD300aの細胞内領域のITIMがリン酸化し、SHP-1をリクルートして、貪食促進シグナルを抑制することによるものであることを明らかにした。また、CD300a遺伝子欠損マクロファージは、死細胞をより多く貪食することをin vitroで確認した。さらにCD300a遺伝子欠損マウスの脳虚血モデルにおいて、神経障害が著明に軽度であることを見出した。これは、虚血ストレスにより誘導される死細胞を貪食することによって、DAMPsが減少し、その結果、炎症病態の軽減と遷延化の抑制によるものであることを明らかにした。さらに、CD300aに対する中和抗体が、脳虚血モデルにおいて神経障害を著明に軽減することを明らかにした。以上の結果は、D300aが炎症の遷延化を阻止し、神経障害を可逆的に回復させ、その不可逆化を予防できる有力な標的因子であることを示したものであり、脳虚血疾患の予防と治療法の開発基盤となりうる。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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