研究領域 | 予防を科学する炎症細胞社会学 |
研究課題/領域番号 |
18H05036
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 政克 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ACOS / IL-7 / Pparγ / 解糖系 / Bach2 / Th2 |
研究実績の概要 |
これまでの研究結果で、in vitroでTh2細胞分化誘導した後、IL-7刺激を加えることで、IL-5産生能とIL-33受容体発現が上昇し、IL-33刺激により抗原非依存的にIL-5、IL-13や炎症性因子を高産生する形質を付与できることを見出していたが、その分子機構は不明であった。平成30年度の研究で、IL-7刺激により解糖系が活性化することが、Th2細胞の抗原非依存的なサイトカイン・炎症性因子の産生に必要であることが分かった。IL-7/IL-33刺激による抗原非依存的なサイトカイン産生は、Pparγ阻害剤により抑制されたことから、IL-7はTh2細胞に作用して解糖系を活性化し、それにより転写因子Pparγの発現が誘導することでTh2細胞に自然リンパ球様の機能を発現させる可能性が考えられた。 私たちは、転写抑制因子Bach2のT細胞特異的欠損マウスが、喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)様の病態を自然発症することを報告してきた。そこで、Bach2のIL-7-Pparγ経路における役割を解析したところ、Bach2の欠損によりIL-7受容体の発現が上昇し、IL-7依存的な解糖系の活性化が増強されることでPparγが過剰に発現することが明らかとなった。つまり、Bach2はIL-7-Pparγ経路の抑制を介してTh2細胞の抗原非依存的なサイトカイン産生を阻害し、ACOS様病態発症を抑えていると考えられる。 さらに、私たちがT細胞特異的Bach2欠損マウスにおけるACOS様病態を改善できる低分子化合物として同定したSH-2251は、Pparγの発現を抑制できることも見出している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Th2細胞が、自然リンパ球様の形質を獲得し、IL-33依存的にIL-5やIL-13を賛成する分子機構を明らかにすることができた。また、その過程を阻害し、治療法の提唱につながる可能性を持つ低分子化合物も同定できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、抗原非依存的な活性化能を有するTh2(Tpath2)細胞のの移入とそれに続く気道傷害性の刺激により、ACOSの発症を誘導する系をまず確立する。次に確立したACOSモデルマウスを用いて、肺の生理機能や肺組織の繊維化、好酸球を中心とした炎症細胞浸潤におけるTpath2の役割について解析する。さらに、Tpath2が選択的に分泌する代謝産物の同定し、それを介して形成される炎症細胞社会(T細胞、マクロファージ、上皮細胞などのクロストークで形成されると予想)の実態解明を目指す。
|