研究実績の概要 |
T細胞特異的Bach2欠損(Bach2-floxed x CD4-Cre: Bach2 KO)マウス、T細胞特異的Bach2トランスジェニック(Rosa-flox-stop cassette-flox x CD4 Cre: Bach2 Tg)マウスを用いて、喘息-慢性閉塞性肺疾患オーバーラップ症候群(ACOS)の発症と深く関わっていることが予想されている抗原非依存的Th2免疫応答の分子機構について解析を行った。その結果、Th2細胞においてBach2はIL-7受容体(IL-7R)の発現調節を介して、抗原非依存的なTh2型免疫応答を制御していることが明らかとなった。IL-7刺激によって誘導される抗原非依存的Th2細胞の特徴であるIL-33受容体(IL-33R)とPparγの発現誘導、Th2サイトカイン遺伝子座のヒストンアセチル化の亢進はいずれも解糖系阻害剤である2-deoxyglucose や解糖系酵素のphosphoglycerate mutase 1の欠損によって抑制された。このことから、IL-7Rシグナルは解糖系活性化を介して抗原非依存的Th2細胞応答を制御していると考えられた。 今年度、新たにACOS様病態を発症したBach2 KO肺CD4 T細胞では、免疫チェックポイント分子である抑制生受容体PD-1が高発現していることが確認された。さらに、ACOS様病態を発症したBach2 KOマウスの肺では、PD-L2が有意に高いことが分かった。肺胞マクロファージでは、PD-L1の発現が高いことが報告されている。現在、Bach2 KOマウスで誘導されるACOS様病態におけるPD-1/PD-L1, PD-L2の役割について解析を進めている。また、Bach2 KOマウスの肺で認められるPD-1陽性IL-33陽性 CD69陽性CD4 T細胞の遺伝子発現様式についても解析を開始している。
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