研究領域 | 予防を科学する炎症細胞社会学 |
研究課題/領域番号 |
18H05047
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
今川 佑介 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (20614770)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生理的ネクローシス |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞社会における死細胞とその周囲の細胞の振る舞いを解析することで、炎症の惹起、遷延化、慢性化のメカニズムの解明と炎症の予防制御を目指している。非感染性の炎症である自然炎症は、死細胞、特に細胞膜が破綻したネクローシス細胞から放出される自己由来のリガンド(内因性リガンド)が原因となって引き起こされると考えられている。しかし、生体内(組織内)において死細胞からどのように炎症反応が惹起され、伝播し、遷延化していくのか、そのメカニズムはよくわかっていない。研究代表者のこれまでの研究で、生理的な環境下の生体内においても制御されたネクローシス型細胞死が誘導されていることを発見している。この細胞死は胚発生期の骨(特に骨表面)の形成に関与することが示唆され、この細胞死がオートファジー関連遺伝子Atg9aに依存する(ただしAtg5には依存しない)ことを同定した。これまでの考えと異なり、このAtg9a依存的ネクローシスの周囲には炎症を示す兆候は観察されなかった。このことから、自然炎症を惹起するネクローシスには、その実行メカニズムに依存した特異性があることが推察される。そこで、ネクローシスの種類によって炎症を惹起する能力に違いがあるのかを検証するために、研究代表者が同定した炎症を惹起しないネクローシス(Atg9a依存的ネクローシス)の実行メカニズムついて解析を行った。まず、in vitroでAtg9a依存的(Atg5非依存的)にネクローシスを誘導する化合物をスクリーニングし、この細胞死を制御する重要な経路を同定した。次に、炎症を惹起しないネクローシスが周囲に与える影響を明らかにするため、骨表面領域で観察されるネクローシスとその周囲をレーザーマイクロダイセクションにより切り出し、死細胞周囲での遺伝子発現の変化をマイクロアレイにより同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、炎症を惹起するネクローシス(病的な細胞死)と炎症を惹起しないネクローシス(生理的な細胞死)それぞれが細胞周囲に与える影響を比較する予定であったが、炎症を惹起しないネクローシスの分子メカニズムの解明が難航したため、炎症を惹起するネクローシスとの比較解析を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析で、炎症を惹起しないネクローシス(Atg9a依存的ネクローシス)の分子メカニズムをある程度明らかにすることができたため、来年度は、当初の予定であった炎症を惹起するネクローシスと炎症を惹起しないネクローシスの比較を行い、ネクローシス型の細胞死が周囲に伝える炎症シグナルをどのように制御しているのかについて解析を行う。
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