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2018 年度 実績報告書

南半球における中高緯度大気循環の不確実性の定量化

公募研究

研究領域熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床
研究課題/領域番号 18H05053
研究機関国立極地研究所

研究代表者

猪上 淳  国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 准教授 (00421884)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード南極 / 極域予測年 / 観測 / 予測 / 極端現象
研究実績の概要

世界気象機関(WMO)が主導する極域予測年(YOPP: Year Of Polar Prediction)において、気象庁や南極観測隊の協力を得ながら、昭和基地や南極内陸のドームふじでのラジオゾンデ観測の強化を行い(2018年11月16日から2019年2月15日)、約130回分の観測データが各国の数値予報に利用された。数値予報における当該強化観測の影響評価は2019年度から行われるが、本研究課題を通じて日本として南極域の大気・海氷の予測可能性研究へ貢献する道筋をつけた。なお本公募研究を契機に、南極域での観測強化の連携・国際情勢の検討等を行う機能として、「YOPP国内連絡会」を気象庁の協力を得て立ち上げ、関連機関との情報交換を年一回程度の頻度で行うことにした。
それに先立ち、既存の観測データを用いたデータ同化実験を本研究課題で実施し、南極域の気象観測データは遠隔地(豪州等)の極端気象の予測向上にも貢献することが示された(Sato et al. 2018 GRL; 2018/10/23 プレスリリース)(南極→中緯度への影響)。これは観測が手薄な南極海上では天気予報に用いる初期場に不確実性が多く含まれるが、それを追加観測で補正することによって、不確実性が低減できることを示唆する。本研究では対流圏上部での観測強化が特に有効であることが分かった。また、ドームふじでのラジオゾンデ観測が昭和基地に暴風をもたらした低気圧の予測の向上に有益であるという解析結果も国際誌に投稿中である。これらの成果はYOPPの国際ワークショップにて発表した。
一方、昭和基地近傍の寒冬・暖冬をもたらすメカニズムを探求するため、中緯度海洋前線の変動と低気圧活動に着目した解析にも着手した(中緯度→南極への影響)。大気再解析データを用いた寒冬・暖冬年の合成解析から、高・低気圧の波列パターンの励起源を特定する解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2018年度に予定していた国際的な枠組みで取り組む強化観測期間(2018年11月16日から2019年2月15日)において、本研究課題によるラジオゾンデ観測が南極の昭和基地およびドームふじで予定通り行われた。これらのデータはリアルタイムで通報され、各国の数値予報(天気予報)に利用されている。またこれらの観測は、2019年度に予定している観測インパクト実験(データ同化実験)を遂行する上で必須であるため、極域予測プロジェクトにおける日本の活動はおおむね順調であると言える。上記の観測の調整は気象庁との連携が重要であったが、「YOPP国内連絡会」を立ち上げるなど、関係者との情報共有を促進する努力も行なった。
また、上記に関連した予備的解析を既存の観測データを用いて実施し、国際共著論文として発表したことも、当該分野を主導しているという点で次年度に繋がる成果と言える。
当該年度は観測的な活動がメインであったため、YOPP以外の研究活動(中緯度から高緯度への遠隔応答実験など)は手薄になりがちであったが、次年度以降は当該分野にもエフォートを割けるため、研究課題全体の進捗はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は(A)極域予測年におけるデータ同化実験、および(B)大気再解析データを用いた遠隔応答解析、の2つのサブテーマについて研究を実施する。また(C)計画研究との連携も模索する。
(A)極域予測年における観測データを用いた数値モデルの網羅的な検証実験やデータ同化実験などは、主要国の気象センターが業務として実施することになっている。研究の棲み分けを行うためにも、当研究課題では南極域や豪州等の中緯度域での極端現象など事例解析に特化した研究を中心に行う方針である。
(B)昭和基地等に異常昇温や多雪を引き起こす極端現象に関して、中緯度から高緯度へ移動してくる低気圧経路やその強度に着目した解析を、特異年の抽出による合成解析により調べる。特に中緯度起源のパラメータ変動(海面水温等)との関連付けを試み、数値モデルによる応答実験などでそのメカニズムを実証する。また、長期再解析データ(100年程度)を併用した数十年スケールの変動解析も行う。
(C)計画研究本体や他の公募研究との連携を考慮しながら、南極内陸での積雪深の年々変動や南極海周辺の海氷変動との関係を調査するとともに、数値モデルによる再現性が南極域で特に不得手なパラメータの抽出を行い、気候モデルの改良に資する知見を見出すことを試みる。

備考

プレスリリース(2018/10/23)

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Australian Antarctic Division(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      Australian Antarctic Division
  • [国際共同研究] The University of Oklahoma(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      The University of Oklahoma
  • [雑誌論文] Improved Reanalysis and Prediction of Atmospheric Fields Over the Southern Ocean Using Campaign-Based Radiosonde Observations2018

    • 著者名/発表者名
      Sato Kazutoshi、Inoue Jun、Alexander Simon P.、McFarquhar Greg、Yamazaki Akira
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letters

      巻: 45 ページ: 11,406~11,413

    • DOI

      10.1029/2018GL079037

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Improved reanalysis and prediction of atmospheric fields over the Southern Ocean by campaign-based radiosonde observations2018

    • 著者名/発表者名
      Sato K., J. Inoue, S. P. Alexander, G. McFarquhar and A. Yamazaki
    • 学会等名
      The 13th Workshop on Antarctic Meteorology and Climate
    • 国際学会
  • [学会発表] Japan Data Denial of ships observations and NWP contributions to YOPP-SH2018

    • 著者名/発表者名
      Inoue, J.
    • 学会等名
      Year of Polar Prediction in the Southern Hemisphere (YOPP-SH#03)
    • 国際学会
  • [図書] 世界気象カレンダー 2019年版2018

    • 著者名/発表者名
      荒木健太郎、猪上淳、佐々木恭子、鈴木和史、鈴木靖、田中好雄、土井威志、筆保弘徳、松本直記、道本光一郎、茂木耕作、山田広幸、吉永順一
    • 総ページ数
      28
    • 出版者
      ジャムハウス
    • ISBN
      978-4-906768-53-0
  • [備考] 南極海での船上気象観測で豪州の低気圧予報を改善

    • URL

      https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20181023.html

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公開日: 2019-12-27  

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