本研究の目的は、小型霊長類のコモンマーモセットを用いて、音声コミュニケーションをともなう向社会行動の神経基盤を解明することである。神経基盤に関しては、in vivo 2光子カルシウムイメージングの系を用いて明らかにする。神経細胞が興奮する際には、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇するため、蛍光カルシウムセンサーを神経細胞に遺伝子発現させることによって、神経活動の可視化ができる。in vivo2光子カルシウムイメージングの特徴は、単一細胞レベルで多細胞の神経活動の計測、長期間・同一神経細胞の細胞体での神経活動の計測、樹状突起および軸索での神経活動の計測が可能な点である。最初に、頭部固定状態、課題実行時に in vivo 2光子カルシウムイメージングをおこなう系を確立した。この結果は、様々な脳領域間での入出力のやりとりを、霊長類でも明らかにすることが可能となることを示唆している。さらに大脳新皮質に光駆動性陽イオンチャネルChR2を遺伝子導入しすることによって光遺伝学の技術を用いて、特定の脳領域の活動を操作する方法を確立した。また、社会行動課題装置も開発した。この装置を用いて、対面させた2頭のコモンマーモセットを対象とし、様々な社会行動を行うかどうかを検討した。
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